女性の更年期障害 Q&A
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
Q ホルモン補充療法のリスクとメリットについて教えてください
A
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期に減少する女性ホルモン(エストロゲン)を補う治療法です。この治療には、更年期症状の改善をはじめとする多くのメリットがある一方で、いくつかのリスクや副作用も存在します。
以下に、ソースに基づいたHRTのメリットとリスクをまとめました。
メリット(ベネフィット)
HRTの主なメリットは、更年期の不快な症状を緩和し、生活の質(QOL)を向上させること、そして更年期以降の健康リスクを予防することです。
• 更年期症状の緩和: ほてり、のぼせ、発汗(ホットフラッシュ)などの血管運動神経症状や、易疲労感、肩こりなどの身体的症状に高い効果があります。
• 生殖器・泌尿器症状の改善: 腟の乾燥感、性交痛、頻尿や尿もれなどの症状を改善します。
• 更年期以降の疾患予防: 骨粗しょう症や脂質異常症の進行を抑え、長期的に見れば骨折や動脈硬化の予防効果も期待できます。
• 心疾患リスクの軽減: 閉経後10年未満、もしくは60歳未満でHRTを開始した場合、心筋梗塞などの心疾患の発症リスクが減少すると報告されています。
リスクと副作用
HRTには、開始直後にみられる一時的な副作用と、長期使用や開始時期に関連するリスクがあります。
• 主な副作用: HRT開始直後(特に最初の3ヶ月程度)は、不正出血、乳房のハリや痛み、腹部のハリ、吐き気、おりものなどの副作用が見られることがあります。これらは体がホルモンに慣れるにつれて、半年から1年ほどで徐々に軽減することが多いです。
• 乳がんの発症リスク:
◦ 5年未満の実施であれば、HRTを行わない場合と比べて乳がん発症リスクに明らかな差はないとされています。
◦ 5年以上継続した場合はリスクがわずかに上昇するという報告もありますが、そのリスクはアルコール摂取、喫煙、肥満などの生活習慣によるリスクと同等かそれ以下です。
◦ 子宮がなくエストロゲン単独療法を行っている場合は、少なくとも7〜10年は乳がんリスクを上昇させない、あるいは低下させると考えられています。
• 心疾患や血栓症などのリスク:
◦ HRTを開始するタイミングが重要です。閉経後10年以上経過している、あるいは60歳を過ぎてから初めてHRTを開始した場合、脳卒中や深部静脈血栓症、心疾患のリスクが逆に増加することが多くの研究で示されています。
治療にあたっての重要な注意点
• 子宮の有無による治療法の違い: 子宮がある方がエストロゲンだけを補充すると、子宮体がん(子宮内膜がん)のリスクが高まります。そのため、子宮がある方には必ず「黄体ホルモン製剤」を併用して子宮内膜を保護します(子宮を摘出している場合はエストロゲン単独療法となります)。
• 治療を受けられない・慎重な投与が必要なケース: 現在乳がんや子宮内膜がんを患っている方、原因不明の不正出血がある方、過去に心筋梗塞や脳卒中などを起こした方などはHRTを行うことができません。また、肥満や特定の病歴がある方は慎重な投与が必要です。
• 定期検診の受診: HRTの実施の有無に関わらず、定期的に乳がん検診や婦人科検診を受けることが大切です。
HRTを行う際は、「自分にとってその治療がどのように役立つか(ベネフィット)」と「健康リスクや負担」のバランスについて、少なくとも1年に1度は医師と相談し、評価を行うことが推奨されています

