【医師解説】血尿の種類|肉眼的血尿と尿潜血、鮮血と潜血の違いを泌尿器科専門医の院長が解説

監修

小林知広

日本専門医機構認定 泌尿器科専門医

この記事の要約

血尿には「見える血尿(肉眼的血尿)」と「見えない血尿(尿潜血)」がある
「せんけつ」には「鮮血(新しい出血)」と「潜血(隠れた出血)」の2つの意味がある
肉眼的血尿では約10〜22%でがんが発見される
顕微鏡的血尿(尿潜血)でも、リスクによっては最大6.3%でがんが見つかる

この記事を読むべき人:

  • 健康診断で尿潜血陽性と言われた方
  • おしっこに血が混じった方
  • 尿が赤い・ピンク色になった方
  • 「せんけつ」の正しい意味を知りたい方
  • 40歳以上で血尿を指摘された方

読了時間: 約8分


監修医師

小林 知広(こばやし ともひろ)
天拝坂こばやしクリニック 院長

保有資格:

  • 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
  • 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医

「血尿」と一言で言っても種類がある

「おしっこに血が混じった」 「健康診断で尿潜血陽性と言われた」

このような経験をされた方は多いのではないでしょうか。

実は、「血尿」には大きく分けて2つの種類があります。 そして、同じ「せんけつ」という言葉でも、全く異なる2つの意味があることをご存知でしょうか。

この記事では、泌尿器科専門医が「血尿の種類」と「せんけつの違い」をわかりやすく解説します。


血尿の2つの分類:肉眼的血尿と顕微鏡的血尿(尿潜血)

血尿は、見えるか見えないかで2つに分類されます。

肉眼的血尿とは

肉眼的血尿とは、目で見て尿が赤い・ピンク色であることがわかる血尿のことです。

特徴

  • 尿が赤色・ピンク色・茶色に見える
  • 血の塊が出ることもある
  • 本人がすぐに気づく
  • 多くの場合、すぐに病院を受診する

原因となる主な疾患

  • 膀胱がん
  • 尿路結石
  • 急性膀胱炎
  • 前立腺肥大症(前立腺からの出血)

肉眼的血尿が出た場合、多くの方がすぐに受診されるため、比較的早期に診断・治療につながります。


顕微鏡的血尿(尿潜血)とは

顕微鏡的血尿とは、目で見ても尿の色は普通だが、顕微鏡で見ると赤血球が見つかる血尿のことです。

健康診断で「尿潜血陽性」と判定されるのが、この顕微鏡的血尿です。

特徴

  • 尿の色は普通(黄色)
  • 本人は気づかない
  • 健康診断で初めて指摘される
  • 「自覚症状がないから大丈夫」と放置されがち

原因となる主な疾患

  • 膀胱がん(初期)
  • 腎がん(初期)
  • IgA腎症
  • 糸球体腎炎
  • 前立腺肥大症

どちらが危険?

結論:どちらも精密検査が必要です。

多くの方が「見える血尿の方が危険」と思われますが、実際のデータは以下の通りです。

肉眼的血尿でのがん発見率

国際的な研究によると、肉眼的血尿の方で以下の確率でがんが発見されることが報告されています

  • 膀胱がん:約9〜17%
  • 腎がん:約1.3%
  • 上部尿路がん:約0.8%
  • 尿路がん全体:約10〜22%

つまり、肉眼的血尿の方の約5〜10人に1人でがんが発見される可能性があります。

顕微鏡的血尿(尿潜血)でのがん発見率

一方、「見えない血尿」でも、以下の確率でがんが発見されることが報告されています

  • 全体平均:約1.85%
  • 低リスク(若年・非喫煙者等):約0.4%
  • 中リスク:約1.0%
  • 高リスク(60歳以上・喫煙歴等):約6.3%

重要:高リスク群では、約15人に1人でがんが見つかります。

特に以下に当てはまる方は要注意です:

  • 男性40歳以上、女性60歳以上
  • 喫煙歴がある
  • 繰り返し尿潜血陽性が出る

血尿診断ガイドライン2023(日本腎臓学会・日本泌尿器科学会ほか6学会合同)では、年齢・性別・喫煙歴・血尿の程度などを総合的にリスク評価して精密検査の必要性を判断することが推奨されています。

参考文献:

  • Systematic Review 2022(PubMed)
  • AUA/SUFU Guideline 2020/2025
  • Lotan Y et al., J Urol 2021
  • 血尿診断ガイドライン2023(6学会合同)

「せんけつ」の違い:鮮血と潜血

同じ「せんけつ」という読み方でも、全く異なる2つの言葉があります。

鮮血(せんけつ)とは

鮮血は、新しい出血、真っ赤な血のことです。

特徴

  • 色:鮮やかな赤色
  • 状態:出たばかりの新鮮な血
  • 場所:出血部位が比較的近い(体の出口に近い)

泌尿器科での使用例

  • 「尿に鮮血が混じっている」→ 膀胱や尿道からの出血の可能性
  • 「鮮血尿」→ 真っ赤な尿

潜血(せんけつ)とは

潜血は、目に見えない血、隠れた出血のことです。

特徴

  • 色:目に見えない(顕微鏡レベル)
  • 状態:ごく少量の出血
  • 検査:試験紙や顕微鏡で検出

医療現場での使用例

  • 「尿潜血陽性」→ 健康診断で見つかる
  • 「便潜血検査」→ 大腸がん検診で使われる

医療現場での使い分け

用語読み方意味使用例
鮮血せんけつ新しい出血、真っ赤な血「鮮血尿が出た」
潜血せんけつ目に見えない血「尿潜血陽性」

ポイント: 健康診断の結果で「せんけつ陽性」と言われた場合、それは「潜血」のことです。


血尿の色で何がわかる?

血尿の色は、出血の場所や程度を知る重要な手がかりになります。

赤色・ピンク色の尿

考えられる原因

  • 膀胱からの出血
  • 尿道からの出血
  • 前立腺からの出血
  • 急性膀胱炎

特徴

  • 出血部位が比較的近い(膀胱・尿道)
  • 新鮮な出血(鮮血)
  • 赤血球がまだ変化していない状態

重要なサイン: 膀胱がんの約65〜85%で、血尿が初発症状として現れると報告されています。 痛みのない鮮紅色の血尿は、特に膀胱がんを疑うサインです。


茶色・コーラ色の尿

考えられる原因

  • 腎臓からの出血(糸球体性血尿)
  • IgA腎症
  • 糸球体腎炎

特徴

  • 出血部位が遠い(腎臓)
  • 尿の中で血液が変化して茶色になる
  • ヘモグロビンが酸化(Fe²⁺→Fe³⁺)している

病態生理: 腎臓の糸球体から出た赤血球は、ネフロン(腎臓の尿細管)の酸性環境と高い浸透圧により、形が変わり(変形赤血球)、ヘモグロビンが酸化されます。 その結果、赤色→茶色・コーラ色に変化します。

見分け方: 茶色・コーラ色の尿に加えて、以下の症状があれば糸球体性血尿の可能性が高くなります:

  • 蛋白尿(尿が泡立つ)
  • むくみ(特に朝、顔や足)
  • 高血圧
  • 尿量の減少

腎臓内科への紹介が必要です。


血の塊が出る場合

考えられる原因

  • 膀胱がん
  • 膀胱炎(重症)
  • 前立腺肥大症
  • 尿路結石

特徴

  • 比較的多量の出血
  • 膀胱内で血液が固まっている
  • 尿閉(おしっこが出なくなる)のリスク

対応: 血の塊が出た場合は、すぐに泌尿器科を受診してください。 場合によっては、緊急で膀胱洗浄が必要になることがあります。


健康診断の「尿潜血陽性」とは

尿潜血の検査方法

健康診断で行われる尿潜血検査は、試験紙法で行われます。

手順

  1. 試験紙を尿に浸す
  2. 赤血球に含まれるヘモグロビンに反応して色が変わる
  3. 色の変化で判定する

尿潜血の判定基準

試験紙法(健康診断で使用):

判定表記意味
陰性赤血球なし
偽陽性±わずかに反応
陽性1++ または 1+少量の赤血球あり
陽性2+++ または 2+中等量の赤血球あり
陽性3++++ または 3+多量の赤血球あり

重要:試験紙で陽性が出ても、顕微鏡検査(尿沈渣)で確定診断が必要です。

顕微鏡的血尿の診断基準(血尿診断ガイドライン2023):

  • 遠心尿:≥5個/HPF(400倍視野)
  • 無遠心尿:≥20個/µL

試験紙のみでは確定診断できないため、必ず尿沈渣顕微鏡検査を受けてください


偽陽性について

尿潜血陽性でも、実際には赤血球がない「偽陽性」の場合があります。

偽陽性の原因

  • 月経の影響(女性)
  • 激しい運動の直後
  • 脱水
  • ミオグロビン尿(筋肉の破壊)

ただし、「偽陽性だろう」と自己判断せず、必ず精密検査を受けてください


血尿の原因となる主な疾患

緊急性の高い疾患

以下の疾患は、すぐに受診が必要です。

膀胱がん

  • 症状:無痛性の肉眼的血尿
  • 特徴:痛みがないのに血尿が出る

腎がん

  • 症状:無痛性の血尿、わき腹の痛み
  • 特徴:初期は無症状のことが多い

尿路結石

  • 症状:激しいわき腹の痛み、血尿
  • 特徴:痛みが非常に強い

精密検査が必要な疾患

IgA腎症

  • 症状:顕微鏡的血尿、タンパク尿
  • 特徴:放置すると腎不全のリスク

糸球体腎炎

  • 症状:血尿、タンパク尿、むくみ
  • 特徴:腎臓の炎症

前立腺肥大症

  • 症状:頻尿、血尿
  • 特徴:中高年男性に多い

一時的な血尿の原因

以下は一時的な血尿の原因ですが、念のため検査を受けることをおすすめします

  • 激しい運動後
  • 発熱時
  • 月経の混入(女性)
  • 膀胱炎(軽症)

こんな症状があったらすぐ受診

以下の症状がある場合は、すぐに泌尿器科を受診してください

  • ✓ 肉眼的血尿(尿が赤い・ピンク色)
  • ✓ 血の塊が出る
  • ✓ 激しいわき腹の痛み
  • ✓ 排尿時の激しい痛み
  • ✓ 発熱を伴う血尿
  • ✓ 尿が全く出ない

血尿の検査・診断

尿検査(尿沈渣)

顕微鏡で尿を観察し、赤血球の数や形を確認します。

わかること

  • 赤血球の数
  • 赤血球の形(糸球体性か非糸球体性か)
  • 白血球・細菌の有無
  • 円柱の有無

超音波検査

腎臓・膀胱を画像で確認します。

わかること

  • 腎臓の腫瘍
  • 膀胱の腫瘍
  • 尿路結石
  • 水腎症

膀胱鏡検査

カメラで膀胱の中を直接観察します。

わかること

  • 膀胱がん
  • 膀胱炎
  • 膀胱結石

CT検査

必要に応じて連携病院でCT検査を行います。

わかること

  • 腎臓の詳細な画像
  • 尿管の状態
  • 腫瘍の有無

よくある質問(FAQ)

Q1: 健康診断で尿潜血陽性と言われました。自覚症状はありません。受診すべきですか?

A: はい、受診をおすすめします。自覚症状がなくても、膀胱がんや腎がんの初期である可能性があります。

特に以下に当てはまる方は精密検査が推奨されます

  • 男性:40歳以上
  • 女性:60歳以上
  • 喫煙歴がある
  • 繰り返し尿潜血陽性が出る

まずは泌尿器科を受診し、リスク評価を受けてください。

参考:AUA/SUFU Guideline 2025、血尿診断ガイドライン2023


Q2: 尿潜血陽性は毎年出ますが、今まで何もありませんでした。今年も大丈夫ですか?

A: いいえ。繰り返し陽性が出る場合、特に注意が必要です。「今まで大丈夫だったから」ではなく、「今年も検査を受ける」ことが重要です。


Q3: 尿が赤くなりましたが、痛みはありません。様子を見ても大丈夫ですか?

A: いいえ。痛みのない血尿は膀胱がんの典型的な症状です。すぐに泌尿器科を受診してください。


Q4: 「鮮血」と「潜血」の違いは何ですか?

A: 「鮮血」は新しい出血で真っ赤な血、「潜血」は目に見えない隠れた出血です。健康診断の「尿潜血陽性」は「潜血」のことです。


Q5: 尿潜血の検査で偽陽性と言われました。精密検査は不要ですか?

A: 「偽陽性の可能性がある」と言われても、精密検査を受けることをおすすめします。偽陽性かどうかは、精密検査をしないと確定できません。


Q6: 運動後に血尿が出ました。病気ですか?

A: 激しい運動後の一時的な血尿もありますが、念のため検査を受けることをおすすめします。運動後の血尿を繰り返す場合は必ず受診してください。


Q7: 女性です。生理中に尿検査を受けたら尿潜血陽性でした。再検査は必要ですか?

A: 月経の影響で偽陽性になった可能性がありますが、月経終了後に再検査を受けてください


Q8: 尿潜血陽性ですが、保険は適用されますか?

A: はい。症状があり、医師が必要と判断した検査は保険適用です。初診料+検査料で5,000〜10,000円程度(3割負担)です。


Q9: 血尿の検査は痛いですか?

A: 尿検査・超音波検査は痛みはありません。膀胱鏡検査は耐えられる程度ですが、痛くないと言えばうそになります。膀胱カメラによる検査は必須ではないですし、やりたくなければ無理強いはしませんので、まずは検査に来てください。


Q10: 血尿が一度だけ出て、その後は出ていません。受診すべきですか?

A: はい。一度でも血尿が出た場合は、必ず受診してください。血尿は出たり出なかったりすることがあるので、今回出てないからと言って安心はできません。リスクとしては肉眼的血尿>尿潜血ですが、どちらも受診しておきましょう。


まとめ

  • 血尿には「肉眼的血尿」と「顕微鏡的血尿(尿潜血)」がある
  • どちらも精密検査が必要
  • 「鮮血」は新しい出血、「潜血」は隠れた出血
  • 健康診断の「尿潜血陽性」は「潜血」のこと
  • 自覚症状がなくても、リスク評価に基づく精密検査を

次の症状があればすぐ受診

  • 肉眼的血尿(尿が赤い・ピンク色)
  • 血の塊が出る
  • 激しい痛みを伴う血尿
  • 繰り返す尿潜血陽性

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天拝坂こばやしクリニックでは、泌尿器科専門医が血尿・尿潜血の精密検査を行っています。

検査内容

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お電話でのご予約
092-918-8338


監修者

天拝坂こばやしクリニック 院長
小林 知広(こばやし ともひろ)

保有資格:

  • 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
  • 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医

経歴:

  • 2009年 島根大学医学部 卒業
  • 2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
  • 2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
  • 2017年 京都ルネス病院 泌尿器科・透析科 医長
  • 2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長

専門分野: 泌尿器科、男性更年期障害、ED治療


参考文献

  1. 日本腎臓学会・日本泌尿器科学会・日本小児腎臓病学会・日本医学放射線学会・日本臨床検査医学会・日本臨床衛生検査技師会. 血尿診断ガイドライン2023. ライフサイエンス出版, 2023.
    https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00799/
  2. Barocas DA, et al. Microhematuria: AUA/SUFU Guideline. J Urol. 2020;204(4):778-786.
    https://www.auajournals.org/doi/10.1097/JU.0000000000001297
  3. Barocas DA, et al. Updates to Microhematuria: AUA/SUFU Guideline (2025). J Urol. 2025.
    https://www.auajournals.org/doi/10.1097/JU.0000000000004490
  4. 日本腎臓学会. エビデンスに基づくIgA腎症診療ガイドライン2020.
    https://www.jsn.or.jp/
  5. 日本腎臓学会. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.
    https://jsn.or.jp/medic/guideline/
  6. Davis R, et al. Diagnosis, evaluation and follow-up of asymptomatic microhematuria (AMH) in adults: AUA guideline. J Urol. 2012;188(6 Suppl):2473-81. PMID: 23098784

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