夜間頻尿の原因は「睡眠時無呼吸症候群」かもしれない|夜中に何度もトイレに起きる方へ
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
この記事の要約
✅ 夜間頻尿の原因は膀胱だけではない。睡眠時無呼吸症候群(SAS)が原因のことがある
✅ SASがあると利尿ホルモン(主にANP)が過剰に分泌され、夜間に尿量が増える
✅ 「いびきがひどい+夜中に何度も起きる」はSASのサインかもしれない
✅ 前立腺・膀胱の薬が効かない夜間頻尿は、SASを疑う重要なサイン
✅ SASを治療すると、夜間頻尿が改善することがある
この記事を読むべき人:
- 夜中に2回以上トイレに起きる方
- いびきがひどいと言われる方
- 日中に強い眠気がある方
- 夜間頻尿の薬を使っても改善しない方
- パートナーのいびきや夜間頻尿が気になる方
読了時間:約8分
監修医師
小林 知広(こばやし ともひろ) 天拝坂こばやしクリニック 院長
保有資格:
- 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
- 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
はじめに
「夜中に何度もトイレで目が覚める…」
その原因は、前立腺や膀胱だけでなく、**睡眠の病気(睡眠時無呼吸症候群:SAS)**の可能性があります。
実際に、夜間頻尿の患者さんの中には、SASが原因となっているケースも少なくありません。
この記事では、泌尿器科専門医の立場から、夜間頻尿の原因・睡眠時無呼吸症候群との関係・見逃してはいけないサイン・検査と治療の流れをわかりやすく解説します。
夜間頻尿とは|何回から異常?
夜間頻尿とは、就寝後から起床までの間に、排尿のために1回以上起きる状態のことです(国際禁制学会の定義)。
ただし臨床的には、2回以上で治療対象になることが多いとされています。
夜間頻尿は非常に一般的な症状で、加齢とともに増加します。「歳のせい」とあきらめてしまう方が多いですが、原因を特定することで改善が期待できるケースがあります。
夜間頻尿の原因は3つのタイプに分かれる
夜間頻尿は大きく3つのタイプに分類されます。
タイプ①:夜間多尿型(夜間に尿が多い)
夜間の尿量自体が増えているタイプです。
夜間多尿の目安:
- 高齢者:1日の尿量の33%以上が夜間に出る
- 若年者:1日の尿量の20%以上が夜間に出る
主な原因:
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)
- 心不全
- 糖尿病
- 腎疾患
タイプ②:膀胱機能型(膀胱にためられない)
膀胱の蓄尿機能が低下しているタイプです。
主な原因:
- 前立腺肥大症
- 過活動膀胱
- 膀胱炎
タイプ③:睡眠障害型(眠りが浅い)
眠りが浅く、わずかな尿意で目が覚めるタイプです。
主な原因:
- 不眠症
- 加齢による睡眠の質の低下
- うつ状態
重要なポイント:実際には、これらが複合して起こっていることが多いです。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
**睡眠時無呼吸症候群(SAS)**とは、眠っている間に呼吸が繰り返し止まる病気です。
定義:10秒以上の無呼吸が1時間あたり5回以上起こる状態(無呼吸低呼吸指数:AHI ≥ 5)。
従来の疫学研究では成人の2〜4%程度とされてきましたが、近年の報告では男性で10〜17%、女性で3〜9%とするデータもあり、実際にはより多くの方が影響を受けている可能性が指摘されています。特に40〜60代の男性に多いことが知られています。
SASの主な症状
夜間の症状:
- 大きないびき
- 呼吸が止まる(家族に指摘されることが多い)
- 夜中に何度も目が覚める
- 夜間頻尿
- 寝汗が多い
日中・起床時の症状:
- 日中の強い眠気
- 起床時の頭痛・口の渇き
- 集中力・記憶力の低下
- 倦怠感・疲れが取れない
- 気分の落ち込み・イライラ
なぜSASが夜間頻尿を引き起こすのか
「目が覚めるからトイレに行く」だけではありません。SASには、夜間に尿量を増やす生理学的なメカニズムが複数あります。
メカニズム①:利尿ホルモン(主にANP)の過剰分泌
無呼吸
↓
低酸素状態・胸腔内陰圧ストレス
↓
心臓(特に心房)に負担がかかり、心房が伸展する
↓
利尿ホルモン(主にANP、一部BNP)が過剰に分泌される
↓
腎臓が夜間に尿をたくさん作る(夜間多尿)
↓
夜間頻尿が起こる
ANP(心房性ナトリウム利尿ペプチド)は本来、心臓への負担を和らげるために分泌されるホルモンです。SASによる低酸素や胸腔内陰圧負荷が繰り返されるたびに心房が伸展し、ANPが過剰分泌されて夜間の尿量が増えてしまいます。心不全などを合併している場合には、BNPも関与すると考えられています。
メカニズム②:ADH(抗利尿ホルモン)の低下
通常、夜間は**ADH(バソプレシン)**が分泌され、尿を濃縮して量を減らす働きをします。
しかしSASがあると、睡眠の質が低下しこのホルモンの分泌リズムが乱れます。その結果、夜間でも尿が薄く・多くなってしまい、夜間多尿の一因となります。
メカニズム③:覚醒反応
無呼吸のたびに脳が「息をしなければ」という覚醒反応を起こします。このとき膀胱の感覚が鋭敏になり、通常より少ない尿量でも強い尿意を感じやすくなります。
メカニズム④:胸腔内陰圧と心臓への直接負荷
息が止まっているとき、呼吸しようとして胸腔内に強い陰圧がかかります。この陰圧により静脈還流と心臓への負荷が増え、心房が伸展することでさらにANPが分泌されます。これが①のメカニズムを物理的に強化する形で、夜間の尿量増加に追加的に関与します。
泌尿器科医がSASを疑う典型パターン
以下の組み合わせがある場合、SASの関与が強く疑われます。
- 夜間頻尿が2回以上
- 前立腺がそれほど大きくない
- αブロッカーやβ3作動薬などの薬で改善しない
- 排尿日誌で夜間多尿が確認される
- いびき・肥満・日中の強い眠気がある
「薬が効かない夜間頻尿」は、SASを疑う重要なサインです。
SASを治療すると夜間頻尿は改善するか
改善するケースがあります。
SASの標準治療であるCPAP療法を行うことで、夜間尿量の減少・排尿回数の減少が報告されています。Guilleminaultらの研究や、最近のシステマティックレビュー(Wang et al., 2023)でも、CPAP導入後に夜間排尿回数が有意に減少したと報告されています。
「泌尿器科でいろんな薬を試しても夜間頻尿が改善しない」という方は、SASが原因の可能性を考えることが重要です。
セルフチェック|SASの可能性を確認する
3つ以上当てはまれば要注意です。医療機関への相談をおすすめします。
いびき・呼吸の問題
- ☐ いびきがひどいと言われる
- ☐ 寝ているときに呼吸が止まっていると指摘された
日中の眠気・疲労
- ☐ 日中に強い眠気がある
- ☐ 会議中・乗り物の中などで居眠りしてしまう
- ☐ 十分に寝たつもりでも疲れが取れない
夜間の症状
- ☐ 夜中に2回以上トイレに起きる
- ☐ 夜中に何度も目が覚める
- ☐ 朝起きたとき頭が痛い・口が渇いている
身体的特徴
- ☐ BMI 25以上
- ☐ 首が太い・短い
- ☐ 顎が小さい
検査の流れ
泌尿器科で行う検査
- 問診:夜間頻尿の回数・量・タイミング
- 排尿日誌:いつ・どのくらいの量の尿が出たかを2〜3日記録
- 尿検査:感染・血尿・糖尿病のスクリーニング
- 超音波検査:前立腺・膀胱・腎臓の評価
- PSA検査(男性):前立腺がんのスクリーニング
排尿日誌は診断のうえで非常に重要な情報です。受診前に2〜3日間記録しておくと、診察がスムーズになります。
SASが疑われる場合
- 自宅での簡易検査:指先・鼻にセンサーをつけて眠るだけ
- 精密検査(PSG:睡眠ポリグラフィー):専門施設で脳波・呼吸・心電図などを含めて詳しく検査
治療
夜間頻尿の治療(原因別)
夜間多尿型(SASが原因):SASの治療で改善が期待できます。
膀胱機能型:
- 過活動膀胱:β3作動薬・抗コリン薬
- 前立腺肥大症:α1遮断薬
夜間多尿型(SAS以外):
- デスモプレシン(夜間尿量を減らすホルモン製剤)
- 心不全・糖尿病・腎臓病などの基礎疾患の治療
SASの治療
CPAP療法(最も標準的な治療): 睡眠中にマスクを装着し、気道に圧力をかけて呼吸を維持します。重症SASに対して最も効果が期待できる治療で、夜間頻尿の改善にもつながることがあります。
口腔内装置(マウスピース): 軽〜中等度のSASに使用します。
生活習慣の改善:
- 減量(肥満がある場合)
- 禁酒(アルコールは気道の筋肉を緩める)
- 横向き寝(仰向けはSASを悪化させやすい)
- 禁煙
よくある質問(FAQ)
Q1:夜間頻尿は何科を受診すればいいですか?
A:まずは泌尿器科がおすすめです。原因を評価し、必要に応じてSASの検査・専門科への紹介につなげることができます。
Q2:いびきと夜間頻尿は関係があるのですか?
A:関係があることがあります。SASがあるといびきが起こりやすく、同時に夜間頻尿も増える可能性があります。いびきがひどい方で夜間頻尿がある場合、SASのスクリーニングをおすすめします。
Q3:前立腺肥大症の薬を飲んでいますが夜間頻尿が改善しません。
A:夜間頻尿の原因が前立腺以外にもある可能性があります。SASや夜間多尿など、他の原因を調べることをおすすめします。排尿日誌が診断の手がかりになります。
Q4:SASの検査はどうやって受けられますか?
A:まずは泌尿器科・内科・呼吸器科などでスクリーニングを行い、必要に応じて精密検査につなげます。自宅で行える簡易検査もあります。
Q5:CPAPは使いにくいと聞きますが…
A:最初は違和感がある方もいますが、多くの方が慣れてきます。近年は小型化・静音化が進んでいます。担当医に相談しながら継続することが大切です。
Q6:女性でもSASになりますか?
A:はい。女性も発症しますが、男性に比べて自覚しにくい症状(日中の倦怠感・眠気・不眠など)が多く、見逃されやすいとされています。夜間頻尿がある女性でもSASを念頭に置いた検査が重要です。
Q7:夜間頻尿は「歳のせい」であきらめるしかないですか?
A:原因を調べることで、改善が期待できるケースがあります。「歳のせい」とあきらめず、一度受診してください。
まとめ
- 夜間頻尿の原因は膀胱だけではない
- SASが原因で夜間に尿量が増えることがある(ANP過剰分泌・ADH低下)
- 「いびき+夜間頻尿」は要注意
- 前立腺・膀胱の薬が効かない夜間頻尿はSASを疑う
- SASを治療すると夜間頻尿が改善することがある
- まずは泌尿器科で原因を正確に調べることが大切
太宰府市で夜間頻尿・排尿の悩みなら
天拝坂こばやしクリニックでは、泌尿器科専門医が夜間頻尿の原因を丁寧に調べ、最適な治療方針をご提案します。
当院でできること:
- 問診・排尿日誌の評価
- 尿検査
- 超音波検査(前立腺・膀胱・腎臓)
- PSA検査(男性)
- SASのスクリーニング・専門医への紹介
こんな方はご相談ください:
- 夜中に2回以上トイレに起きる
- いびきがひどいと言われる
- 日中に強い眠気がある
- 夜間頻尿の薬を使っても改善しない
- 夜間頻尿の原因をきちんと調べたい
アクセス:
- 太宰府市から車で約10分
- 筑紫野市から車で約5分
- 大野城市から車で約15分
- 春日市から車で約15分
- 小郡市から車で約20分
駐車場完備
Web予約(24時間受付) https://patient.digikar-smart.jp/institutions/a356aa2e-6198-4d7f-9416-0731c1996e97/reserve
お電話 092-918-8338
監修者
天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)
保有資格:
- 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
- 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
経歴:
- 2009年 島根大学医学部 卒業
- 2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
- 2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
- 2017年 京都ルネス病院 泌尿器科・透析科 医長
- 2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長
参考文献
- 日本呼吸器学会 監修. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020. https://www.jrs.or.jp/publication/file/guidelines_sas2020.pdf
- 日本循環器学会ほか. 循環器領域における睡眠時無呼吸症候群の診療に関するガイドライン(2023年改訂版). https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_kasai.pdf
- 日本泌尿器科学会. 夜間頻尿診療ガイドライン 第2版. リッチヒルメディカル; 2020.
- 日本泌尿器科学会・日本排尿機能学会. 過活動膀胱診療ガイドライン 第3版.
- van Kerrebroeck P, et al. Basic concepts in nocturia, based on International Continence Society terminology. Neurourol Urodyn. 2019. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30070389/
- International Continence Society (ICS). Nocturia terminology discussion. https://www.ics.org/committees/standardisation/terminologydiscussions/nocturia
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- Guilleminault C, et al. Nocturia and its relationship to sleep-disordered breathing. Urology. 2004;63(2):357-360.
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