殿方のおしっこを悩ます「前立腺肥大症」とは|症状・原因・治療を泌尿器科専門医が解説
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
この記事の要約
✅ 前立腺肥大症は、50代以上の男性に多い「おしっこのトラブル」の代表疾患
✅ 尿が出にくい・勢いが弱い・夜中に何度も起きる……これが典型的な症状
✅ 原因は加齢と男性ホルモン。前立腺が肥大して尿道を圧迫する
✅ 薬で改善できるケースが多い。重症なら手術も選択肢
✅ 前立腺がんと同時に存在することもあるため、PSA検査は必須
この記事を読むべき人:
- 最近、おしっこの勢いが弱くなった気がする方
- 夜中に何度もトイレに起きる方
- 排尿に時間がかかるようになった方
- 残尿感が気になる方
- 前立腺肥大症と前立腺がんの違いが気になる方
読了時間:約8分

監修医師
小林 知広(こばやし ともひろ) 天拝坂こばやしクリニック 院長
保有資格:
- 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
- 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
はじめに|「おしっこのトラブル」に悩む殿方へ
「最近、トイレに行く回数が増えた気がする」 「おしっこの勢いが昔と違う」 「夜中に何度も起きてしまう」
こうした「おしっこのトラブル」を抱えながら、恥ずかしくて誰にも相談できず、一人で悩んでいる方が多くいます。
実は、こうした症状の多くは前立腺肥大症が原因です。
前立腺肥大症は珍しい病気ではありません。50代以上の男性であれば、誰にでも起こりうる、非常に一般的な疾患です。そして、適切に治療することで、症状の改善が期待できます。
「歳のせいだから仕方ない」とあきらめる前に、ぜひこの記事を読んでみてください。
前立腺とは?
まず、前立腺という臓器について知っておきましょう。
前立腺は、男性にしかない臓器です。膀胱の下にあり、尿道をリング状に取り囲む形で存在しています。
前立腺の役割
- 精液の一部(前立腺液)を作る
- 射精を助ける
普段は意識することのない臓器ですが、加齢とともに少しずつ大きくなり、尿道を圧迫するようになります。これが「前立腺肥大症」です。
前立腺の大きさ
正常な前立腺の大きさは、クルミ程度(約20g)。
加齢とともに大きくなり、50代以降に肥大が目立ちはじめます。
前立腺肥大症とは
前立腺肥大症とは、前立腺が大きくなって尿道を圧迫し、さまざまな排尿症状を引き起こす疾患です。
有病率
前立腺肥大症は非常に一般的な疾患です。
- 50代:約20〜30%
- 60代:約40〜60%
- 70代:約70〜80%
80代以上になると、ほぼすべての男性に組織学的な肥大を認めるとも言われています。
前立腺肥大症の症状
前立腺肥大症の症状は大きく2つのグループに分かれます。
①排尿症状(尿が出にくい系)
前立腺が尿道を圧迫することで起こる症状です。
尿勢低下:おしっこの勢いが弱い、細くなった
排尿遅延:トイレに行っても、なかなか出てこない
排尿中断:おしっこが途中で止まってしまう
腹圧排尿:力まないと出ない
残尿感:出し切った感じがしない
遷延性排尿:おしっこが終わるまでに時間がかかる
②蓄尿症状(膀胱にたまらない系)
圧迫が続くことで膀胱が過敏になり、少量の尿でも強い尿意を感じるようになります。
頻尿:日中の排尿回数が多く、本人が不便を感じる状態(目安として8回以上が多いですが、回数だけでなく本人の困り度や生活への影響も重要です)
夜間頻尿:夜中に2回以上トイレに起きる
尿意切迫感:急に強い尿意がきて、トイレを我慢できない
切迫性尿失禁:間に合わず漏れてしまう
③排尿後症状
排尿後点滴:トイレから離れた後も尿がポタポタ垂れる
残尿感:常にすっきりしない感覚
症状の重さは前立腺の大きさだけで決まらない
重要なポイントとして、症状の程度は前立腺の大きさだけでは決まりません。
膀胱の反応性(膀胱がどれだけ敏感になっているか)や出口閉塞の程度によっても大きく変わります。
そのため、前立腺が少し大きいだけでも強い症状が出る方もいれば、かなり大きくても症状がほとんどない方もいます。
**IPSS(国際前立腺症状スコア)**という7項目の質問で、症状の重さを数値化できます。
| スコア | 重症度 |
|---|---|
| 0〜7点 | 軽症 |
| 8〜19点 | 中等症 |
| 20〜35点 | 重症 |
受診前にセルフチェックしておくと、診察がスムーズです。
⚠️ こんな症状はすぐ受診
以下の症状がある場合は、早めに受診してください。
- 尿が全く出ない(尿閉)
- 血尿が続いている
- 排尿時に激しい痛みがある
特に**尿閉(おしっこが全く出ない)**は緊急対応が必要です。膀胱が限界を超えて尿をためてしまい、激しい痛みを伴います。
前立腺肥大症の原因
加齢と男性ホルモン
前立腺肥大症の主な原因は、**加齢と男性ホルモン(テストステロン)**です。
テストステロンが5α還元酵素によって**DHT(ジヒドロテストステロン)**に変換され、このDHTが前立腺細胞の増殖を促します。
つまり、男性ホルモンが活発に働いた結果として前立腺が大きくなるのです。
リスクを高める要因
- 加齢(最も大きな因子)
- 肥満・メタボリックシンドローム
- 糖尿病
- 運動不足
- アルコール・カフェインの過剰摂取
前立腺肥大症の診断
問診・症状スコア
IPSSによる症状スコアの評価を行います。
尿流量測定(ウロフロメトリー)
専用トイレで排尿するだけで、おしっこの勢い・量・時間を測定できます。痛みは一切ありません。
残尿測定
超音波検査(エコー)で、排尿後に膀胱に残っている尿の量を測定します。
超音波検査(経腹的・経直腸的)
前立腺の大きさや形を確認します。
PSA検査
**PSA(前立腺特異抗原)**は、前立腺がんのスクリーニングに使う血液検査です。
前立腺肥大症の診察では、前立腺がんが同時に存在しないかを評価するためにPSA検査を行うことが多いです。ただし、どのような状況でも機械的に全例に行うというより、年齢・症状・患者さんの希望などを踏まえて判断します。
前立腺肥大症の治療
①薬物療法(まず試みる治療)
多くの場合、薬で症状の改善が期待できます。ただし前立腺肥大症は「治す」というより、症状と合併症リスクを長期にわたってコントロールする長期管理が基本です。「薬を飲み続ける必要があるか」については、症状の改善度合いに応じて医師と相談しながら決めていきます。
α1ブロッカー(αブロッカー):
- 前立腺・尿道・膀胱頚部の筋肉を緩める
- 尿の通り道を広げる
- 比較的早く効果が出やすい
- 代表薬:タムスロシン(ハルナール等)
5α還元酵素阻害薬:
- テストステロンのDHTへの変換を抑える
- 前立腺を縮小させる
- 効果が出るまで数ヶ月かかる
- 前立腺が大きい方に有効
β3作動薬:
- 過活動膀胱(頻尿・切迫感)を伴う場合に使用
- 膀胱を落ち着かせる
漢方薬:
- 八味地黄丸・牛車腎気丸など
- 他の薬と組み合わせて使うことがある
②手術療法(薬が効かない場合・重症の場合)
薬での効果が不十分な場合や、重症の場合には手術を検討します。
TURP(経尿道的前立腺切除術):
- 尿道から内視鏡を入れて、肥大した前立腺組織を切除する
- 最も標準的な手術
HoLEP(ホルミウムレーザー前立腺核出術):
- レーザーを使って前立腺組織を切除する
- 出血が少ない
光選択的前立腺蒸散術(PVP):
- グリーンレーザーで前立腺組織を蒸散させる
③生活習慣の改善
薬や手術と並行して、生活習慣を見直すことも大切です。
避けたいもの(症状を悪化させうる誘因):
- アルコール(膀胱を刺激し、尿量を増やす)
- カフェイン(コーヒー・緑茶・エナジードリンク等)
- 辛い食べ物
- 夕方以降の過度な水分摂取
これらは前立腺肥大症の「原因」ではありませんが、症状を悪化させうるため、摂取量の調整が勧められます。
積極的に行うこと:
- 規則正しい排尿習慣
- 適度な運動(肥満解消)
- 骨盤底筋訓練
前立腺肥大症と前立腺がんの違い
「前立腺が大きい=がんになる?」という不安をお持ちの方が多いですが、前立腺肥大症が前立腺がんに変わるわけではありません。
違いを表で整理
| 項目 | 前立腺肥大症 | 前立腺がん |
|---|---|---|
| 場所 | 前立腺の内腺(移行域)で発生 | 前立腺の外腺(辺縁域)で発生 |
| 症状 | 尿のトラブルが出やすい | 初期は無症状のことが多い |
| 進行 | 悪性ではない | 転移・進行することがある |
| PSA | 軽度上昇することも | 高値になることが多い |
重要:同時に存在することがある
前立腺肥大症と前立腺がんは別の疾患であり、同時に発症することがあります。
「前立腺肥大症があるからがんは大丈夫」ということにはなりません。
PSA検査(血液検査)で定期的にスクリーニングを受けることが、前立腺がんを見つける上で重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1:前立腺が大きいと必ず症状が出ますか?
A:必ずしも症状が出るわけではありません。前立腺が大きくても症状がほとんどない方もいますし、前立腺が少し大きいだけでも強い症状が出る方もいます。症状の程度と前立腺の大きさは必ずしも比例しません。
Q2:薬を飲み続けなければいけませんか?
A:前立腺肥大症は「治す」というより、症状と合併症リスクを長期にわたってコントロールする疾患です。多くの場合は服薬を続けながら経過を見ます。症状の改善度合いによっては、医師と相談しながら減薬・休薬を検討できる場合もあります。
Q3:放置するとどうなりますか?
A:重症化すると、「尿閉(おしっこが全く出ない)」になることがあります。また、膀胱や腎臓に負担がかかり、腎機能が低下するリスクもあります。症状がある場合は早めに受診してください。
Q4:前立腺がんの検査もしてもらえますか?
A:はい。前立腺肥大症の診断と同時に、PSA検査(血液検査)で前立腺がんのスクリーニングも行います。
Q5:日常生活で気をつけることはありますか?
A:アルコール・カフェインを控え、夕方以降の水分を適度に制限することが有効です。ただし、水分の取りすぎにも不足にもならないようにしましょう。
Q6:性機能に影響しますか?
A:前立腺肥大症の薬の一部(α1ブロッカー)に、射精障害(逆行性射精)が副作用として現れることがあります。服薬前に医師にご相談ください。
Q7:手術は怖いのですが…
A:TURPなどの経尿道的手術は、お腹を切る必要がなく、体への負担が比較的少ない手術です。近年はレーザーを使った方法も増え、出血も少なくなっています。薬で十分な効果が得られない場合は、手術についても詳しくご説明します。
まとめ
- 前立腺肥大症は50代以上の男性に非常に多い疾患
- 尿が出にくい・頻尿・夜間頻尿が主な症状
- 加齢と男性ホルモンが原因
- 薬で症状の改善が期待できるケースが多い
- 前立腺がんとの同時発症があるため、PSA検査(血液検査)で定期的にスクリーニングを受けることが勧められる
- 尿が全く出ない(尿閉)はすぐ受診
「恥ずかしい」「歳のせいだから仕方ない」とあきらめていませんか?
前立腺肥大症は、適切な治療で症状の改善が期待できます。一人で悩まず、泌尿器科専門医にご相談ください。
太宰府市で前立腺肥大症の診療なら
天拝坂こばやしクリニックでは、泌尿器科専門医が前立腺肥大症の診断・治療を行っています。
当院でできること:
- 問診・IPSSスコア評価
- 尿流量測定(ウロフロメトリー)
- 残尿測定(超音波検査)
- 超音波検査(前立腺の大きさ確認)
- PSA検査(前立腺がんのスクリーニング)
- 薬物療法の処方・管理
- 手術が必要な場合は専門施設へご紹介
こんな方はご相談ください:
- おしっこの勢いが弱くなった
- 夜中に何度もトイレに起きる
- 排尿に時間がかかるようになった
- 残尿感が気になる
- 前立腺のことが心配
アクセス:
- 太宰府市から車で約10分
- 筑紫野市から車で約5分
- 大野城市から車で約15分
- 春日市から車で約15分
- 小郡市から車で約20分
駐車場完備
Web予約(24時間受付) https://patient.digikar-smart.jp/institutions/a356aa2e-6198-4d7f-9416-0731c1996e97/reserve
お電話 092-918-8338
監修者
天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)
保有資格:
- 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
- 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
経歴:
- 2009年 島根大学医学部 卒業
- 2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
- 2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
- 2017年 京都ルネス病院 泌尿器科・透析科 医長
- 2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長
専門分野:泌尿器科、男性更年期障害、ED治療
参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本排尿機能学会. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン 2022年版. https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/27_lower-urinary_prostatic-hyperplasia_rev2023_info.pdf
- 日本泌尿器科学会. 前立腺肥大症診療ガイドライン 2017年版. https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00394/
- EAU Guidelines on Non-neurogenic Male LUTS, including BPO. https://uroweb.org/guidelines/non-neurogenic-male-luts
- AUA Guideline: Management of Lower Urinary Tract Symptoms Attributed to BPH.
- 愛知医科大学 泌尿器科. 前立腺肥大症. https://aichiikadaigaku-hinyoukika.com/treatment/diseases/bph.html
- 北里大学病院 泌尿器科. 前立腺肥大症. https://www.khp.kitasato-u.ac.jp/ska/uro/patient/diseases/benign_prostatic_hyperplasia/