テストステロン低下を防ぐ食生活|男性ホルモンと食事の関係を泌尿器科専門医が解説
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
この記事の要約
✅ 栄養不足や極端なダイエットはテストステロン低下と関連することが多くの研究で示されている
✅ 亜鉛・ビタミンD・良質なタンパク質・適度な脂質の欠乏を避けることが大切
✅ 極端な糖質制限や脂質カットは、かえってホルモン環境に悪影響の可能性がある
✅ 食事だけでなく、睡眠・運動・ストレス管理・肥満解消もあわせて重要
✅ 食生活を見直しても改善しない場合は、血液検査・治療という選択肢がある
この記事を読むべき人:
- 最近やる気・元気が出ないと感じる方
- 疲れやすくなったと感じる男性
- テストステロンを自然に高めたい方
- 男性更年期(LOH症候群)が気になる方
- 食事から体調を整えたい方
読了時間:約8分
監修医師
小林 知広(こばやし ともひろ) 天拝坂こばやしクリニック 院長
保有資格:
- 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
- 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
はじめに|テストステロンは「食べ物」で変わる
「最近、なんだか元気が出ない」 「疲れが抜けない」 「やる気が湧かない」
その背景に、テストステロン(男性ホルモン)の低下が関わっていることがあります。
テストステロンは「男らしさ」のホルモンというイメージがありますが、実際には筋肉・骨・気力・性機能・代謝など、男性の心身の健康を幅広く支えています。
そして、このテストステロンは食生活と深く関わっています。
肥満・栄養不足・極端なダイエットなどの食生活がテストステロン低下と関連することは多くの研究で示されており、バランスの取れた食事はテストステロンを維持するうえで重要な要素のひとつです。
この記事では、テストステロン治療を専門とする泌尿器科医の立場から、テストステロン低下を防ぐ食事のポイントを解説します。
テストステロンとは
テストステロンは、主に精巣で作られる男性ホルモンです。
テストステロンの主な働き
- 筋肉量・筋力の維持
- 骨密度の維持
- 性欲・性機能の維持
- 気力・意欲・集中力
- 脂肪燃焼・代謝の調整
- 赤血球の産生
加齢とともに低下する
テストステロンは20代をピークに、加齢とともに少しずつ低下していきます。
低下が進むと、**LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症=いわゆる男性更年期)**につながることがあります。
ただし、低下のスピードには個人差が大きく、生活習慣(特に食事)が大きく影響することが分かっています。
テストステロンを高める栄養素
① 亜鉛|欠乏を避けることが重要
亜鉛は、テストステロンの合成に欠かせないミネラルです。
亜鉛が不足すると、テストステロンの生成が低下しやすくなります(Prasad らの研究で、亜鉛制限でテストステロンが低下し、亜鉛欠乏の高齢男性に補充するとテストステロンが改善したことが報告されています)。
ただし、これは「亜鉛が欠乏している場合の補充効果」の研究です。亜鉛が十分な健常男性が追加摂取することでテストステロンが大きく上昇するという証拠は限定的です。
大切なのは「亜鉛欠乏を避けること」。推奨量を下回らないよう、日々の食事から意識して摂取することが重要です。
亜鉛が豊富な食品:
- 牡蠣(カキ)※特に豊富
- 牛赤身肉
- レバー
- うなぎ
- 卵黄
- チーズ
- ナッツ類(特にカシューナッツ)
② ビタミンD|欠乏男性での補充効果が報告されている
ビタミンDは「ビタミン」と呼ばれていますが、体内ではホルモンに近い働きをします。
血中ビタミンD濃度とテストステロン値に関連があることが複数の研究で報告されています(Pilz らの RCT では、ビタミンD欠乏気味の男性でビタミンD補充によりテストステロンが上昇しました)。
一方、ビタミンDが正常域にある健常男性を対象にした RCT では、補充によるテストステロンへの有意な影響を認めなかった報告もあります。つまり、欠乏している方が補充することで効果が期待できるという理解が現時点では妥当です。
まずはビタミンD不足を避けることを意識しましょう。
ビタミンDが豊富な食品:
- 鮭(サーモン)
- いわし・さんまなどの青魚
- きのこ類(しいたけ・まいたけ)
- 卵黄
日光浴も有効: ビタミンDは日光(紫外線)を浴びることで皮膚でも作られます。1日15〜30分程度の適度な日光浴も効果的です。
③ 良質なタンパク質|ホルモンの材料
タンパク質は、筋肉だけでなくホルモンの材料にもなります。
不足すると筋肉量が低下し、結果的にテストステロンにも影響します。
おすすめのタンパク質源:
- 鶏肉・牛肉・豚肉(赤身)
- 魚(青魚は特に良い)
- 卵
- 大豆製品(豆腐・納豆)
- 乳製品
④ 適度な脂質|極端な低脂肪食は要注意
テストステロンはコレステロールを原材料とするステロイドホルモンです。
メタ解析(Patel ら 2021)では、極端な低脂肪食が総テストステロンを低下させたとする報告があります。一方で介入研究全体では結果が一致しないため、「極端な脂質制限を避けること」が現時点での現実的なメッセージです。
脂質の量よりも「質」が大切です。
摂りたい良質な脂質:
- オリーブオイル
- 青魚(EPA・DHA)
- アボカド
- ナッツ類
- 卵
避けたい脂質:
- トランス脂肪酸(マーガリン・揚げ物・スナック菓子)
- 飽和脂肪酸の過剰摂取
テストステロンを下げてしまう食習慣
① 極端な糖質制限・カロリー制限
過度なダイエットは、体が「エネルギー不足」と判断し、ホルモン産生を抑えてしまいます。
減量は大切ですが、極端な制限は逆効果です。
② 糖質・甘いものの摂りすぎ
急性の糖負荷後にテストステロンが一過性に低下したという報告があります。長期的には、糖質過多による肥満・メタボリックシンドロームを通じてテストステロンが低下しやすくなることが、多くの研究で示されています。
清涼飲料水・お菓子の摂りすぎには注意が必要です。
③ アルコールの飲みすぎ
過度な飲酒は、精巣でのテストステロン産生を低下させることがあります。特にビールの飲みすぎには注意が必要です。
適量(1日ビール中瓶1本程度まで)を心がけましょう。
④ 加工食品・ジャンクフード中心の食事
栄養バランスが偏り、亜鉛・ビタミンDなどが不足しやすくなります。
テストステロンを高める1日の食事例
朝食
- 卵(亜鉛・タンパク質・ビタミンD)
- 納豆(タンパク質)
- 焼き鮭(ビタミンD・良質な脂質)
- ご飯・味噌汁
昼食
- 牛赤身肉のステーキ(亜鉛・タンパク質)
- サラダ(オリーブオイルのドレッシング)
- 玄米
夕食
- 牡蠣(亜鉛の王様)※旬の時期に
- 青魚の刺身(EPA・DHA)
- 豆腐(タンパク質)
- きのこ類(ビタミンD)
間食
- ナッツ類(亜鉛・良質な脂質)
- チーズ(亜鉛・タンパク質)
食事以外の生活習慣も大切
食事だけでなく、生活習慣全体がテストステロンに影響します。
① 睡眠
メタ解析(Cai ら 2021)では、完全な徹夜や慢性的な睡眠不足がテストステロン低下と関連することが示されています。慢性的な睡眠不足は男性ホルモンに悪影響を及ぼしうるというコンセンサスは概ねあり、1日7時間程度の質の良い睡眠を目指しましょう。
② 運動
特に筋力トレーニング(スクワットなど大きな筋肉を使う運動)はテストステロンの分泌を促します。
③ ストレス管理
慢性的なストレスに伴うコルチゾール(ストレスホルモン)の高値と、テストステロン低下の関連を示す研究があります。ストレス過多がテストステロン低下と関連するリスク因子になりうるため、ストレスを溜め込まない工夫が大切です。
④ 肥満の解消
内臓脂肪はテストステロンを女性ホルモンに変換する酵素(アロマターゼ)を活性化させます。肥満の解消はテストステロン維持につながります。
食生活を見直しても改善しないときは
食事や生活習慣を整えても、
- 強い倦怠感が続く
- やる気が出ない
- 性機能の低下
- 気分の落ち込み
といった症状が続く場合は、テストステロンが大きく低下している(LOH症候群)可能性があります。
この場合、血液検査でテストステロン値を測定し、必要に応じてテストステロン補充療法などの治療を検討することができます。
「食事で頑張っているのに改善しない」と感じたら、一度ご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q1:サプリメントで亜鉛やビタミンDを摂ってもいいですか?
A:食事から摂るのが基本ですが、不足しがちな方はサプリメントも選択肢です。ただし亜鉛は過剰摂取で銅の吸収を妨げることがあるため、用量を守ることが大切です。
Q2:どのくらいで効果が出ますか?
A:食生活の改善は、すぐに数値が変わるものではありません。数ヶ月単位で続けることが大切です。
Q3:牡蠣を毎日食べた方がいいですか?
A:牡蠣は亜鉛が非常に豊富ですが、毎日食べる必要はありません。様々な食品からバランスよく亜鉛を摂ることをおすすめします。
Q4:プロテインを飲むとテストステロンは上がりますか?
A:プロテイン自体が直接テストステロンを上げるわけではありませんが、タンパク質不足を補い、筋トレと組み合わせることで間接的にプラスに働きます。
Q5:食事で必ずテストステロンは上がりますか?
A:食事は重要な要素ですが、すべての方で必ず上がるわけではありません。加齢や体質、基礎疾患の影響もあります。改善しない場合は検査をおすすめします。
Q6:男性更年期かどうか、どうすれば分かりますか?
A:血液検査でテストステロン値を測定し、症状とあわせて総合的に判断します。気になる方は泌尿器科・メンズヘルス外来にご相談ください。
まとめ
- 極端なダイエットや栄養不足はテストステロン低下と関連する
- 亜鉛・ビタミンDは欠乏を避けることが重要(欠乏状態での補充に効果が期待できる)
- 極端な低脂肪食・糖質過多・飲みすぎは避ける
- 睡眠・運動・ストレス管理・肥満解消もあわせて大切
- 食事で改善しない場合は血液検査・治療という選択肢がある
「食事でテストステロンを確実に上げられる」と断言するにはエビデンスは限定的ですが、テストステロン低下を防ぐための生活習慣として、バランスの取れた食事は最も基本的かつ重要な土台です。
「最近元気が出ない」と感じたら、まずは食生活を見直してみてください。それでも改善しない場合は、一人で悩まず専門医にご相談ください。
太宰府市で男性更年期・テストステロンのご相談なら
天拝坂こばやしクリニックでは、テストステロン治療認定医が男性更年期(LOH症候群)の診断・治療を行っています。
当院でできること:
- 問診・症状評価(AMSスコア)
- 血液検査(テストステロン値の測定)
- 生活習慣・食事のアドバイス
- テストステロン補充療法
- ED・男性機能のご相談
こんな方はご相談ください:
- やる気・元気が出ない
- 疲れが抜けない
- 性機能の低下が気になる
- 食生活を見直しても改善しない
アクセス:
- 太宰府市から車で約10分
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監修者
天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)
保有資格:
- 日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
- 日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
経歴:
- 2009年 島根大学医学部 卒業
- 2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
- 2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
- 2017年 京都ルネス病院 泌尿器科・透析科 医長
- 2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長
専門分野:泌尿器科、男性更年期障害、ED治療
参考文献
- 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会. 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き. https://www.urol.or.jp/lib/files/other/guideline/30_loh_syndrome.pdf
- Bhasin S, et al. Testosterone Therapy in Men With Hypogonadism: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2018. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29562364/
- EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health – Male Hypogonadism section. 2022.
- Prasad AS, et al. Zinc status and serum testosterone levels of healthy adults. Nutrition. 1996. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S089990079680058X
- Pilz S, et al. Effect of vitamin D supplementation on testosterone levels in men. Horm Metab Res. 2011. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21154195/
- Lerchbaum E, et al. Vitamin D and Testosterone in Healthy Men: A Randomized Controlled Trial. J Clin Endocrinol Metab. 2017. https://academic.oup.com/jcem/article/102/11/4292/4096785
- Patel AS, et al. Low-fat diets and testosterone in men: Systematic review and meta-analysis. J Steroid Biochem Mol Biol. 2021. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33741447/
- The Effect of Low-Fat Diets Versus High-Fat Diet on Sex Hormones. Comprehensive Review. 2025. https://ift.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/1750-3841.70266
- Cai H, et al. Effect of partial and total sleep deprivation on serum testosterone in men: Systematic review and meta-analysis. Sleep Med. 2021. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S138994572100544X
- Dhindsa S, et al. Obesity in men: the hypogonadal–estrogen receptor relationship. Med Hypotheses. 2008. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17825496/