「射精後に排尿すると癌になる」は嘘?SNSのデマと医学的真実を専門医が解説
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
SNSで拡散中の「射精後すぐトイレに行くと癌になる」という噂。泌尿器科専門医が医学的根拠をもとに解説します。結論から言うとこの説に医学的な根拠はありません。逆に「射精回数が多いと癌リスクが下がる」という驚きのデータも紹介します。
この記事は、日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医の小林 知広 (天拝坂こばやしクリニック院長 プロフィールはこちらhttps://tenkoba.clinic/doctor/)が執筆・監修しています。
皆さん、こんにちは。 天拝坂こばやしクリニック、院長の小林です。
最近、診察室でもSNSでも、こんな質問をいただくことが増えました。
「射精した後、すぐにおしっこをすると癌になるって本当ですか?」
SNSでは「アメリカの論文でリスクが20倍になる」といった衝撃的な投稿が拡散されているようですが、これを見て不安になっている男性も多いのではないでしょうか。
結論から申し上げます。 その情報は、医学的根拠のない全くのデマ(嘘)です。
今回は、なぜこのような噂が流れたのか、そして医学的に正しい「射精と排尿の関係」について解説します。
「射精後の排尿=癌」は真っ赤な嘘
まず、ご安心ください。 医学論文のデータベースをいくら調査しても、「射精直後の排尿が、前立腺がんや膀胱がんのリスクを高める」という研究結果は世界中どこにも存在しません。
日本泌尿器科学会や米国泌尿器科学会などの公的機関からも、そのような警告が出された事実は一切ありません。 SNSで語られている「リスク20倍」「膀胱がんが15倍」といった数字は、出典不明の架空の数字と考えて間違いありません。
むしろ「射精」は癌リスクを下げる?
「癌になる」どころか、逆に「射精の回数が多いほど、前立腺がんのリスクが下がる」という興味深い研究データが存在します。
2016年に医学誌『European Urology』で発表された研究によると、以下のような結果が報告されています。
- 月に21回以上射精する男性は、月に4〜7回の男性に比べて、前立腺がんのリスクが約20%低かった。
これは、定期的に前立腺液を排出することが、前立腺内の発がん性物質の蓄積を防ぐためではないか、などの仮説が立てられています。 つまり、性機能が活発であることは、男性の健康にとってポジティブな要素である可能性が高いのです。
生理学的にも「事後の排尿」は正しい行為
医学的な観点から見ても、射精後の排尿は推奨される行為です。
- 感染予防:尿道に残った精液や、性行為で入り込んだ細菌を尿で洗い流すことで、尿道炎や膀胱炎の予防につながります。
- 我慢は逆効果:排尿を無理に我慢すると、逆に細菌が繁殖しやすくなり、炎症のリスクを高めてしまいます。
女性が性行為後に膀胱炎予防のために排尿を勧められるのと同様に、男性にとっても事後の排尿は**「自浄作用(洗浄)」**として理にかなっています。
「おしっこが出にくい」のは正常な反応
「でも、射した直後は尿が出にくいし、二股に分かれたりするから体に悪いのでは?」 そう心配される方もいるかもしれません。
これは、射精のために前立腺や尿道が一時的に充血・収縮しているために起こる正常な生理現象です。 時間が経てば充血は収まり、元通りスムーズに出るようになります。「出にくい=癌の予兆」ではありませんので、ご安心ください。
まとめ
SNSの衝撃的な見出しに惑わされないでください。
- 「射精後すぐ排尿すると癌になる」という医学的根拠はありません。
- むしろ、適度な射精頻度は前立腺がんリスクを下げる可能性があります。
- 事後の排尿は、感染症予防の観点からもメリットがあります。
もし、ネットの情報で不安になったり、排尿や性機能に関して気になる症状があれば、一人で悩まず専門医にご相談ください。 正しい知識で、健康な毎日を送りましょう!
【参考リンク】
この記事の監修者
天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)
【保有資格】
日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
メンズヘルス学会認定 テストステロン治療認定医
【経歴】
2009年 島根大学医学部 卒業 / 武田病院 初期研修
2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
2017年 京都ルネス病院泌尿器科・透析科 医長 2
024年 天拝坂こばやしクリニック 院長
【受賞歴】
2015年 第34回アンドロロジー学会学術大会 臨床部門学会賞 受賞 (論文題:非閉塞性無精子症患者980人におけるAZF遺伝子欠失の頻度とTESEでの精子採取率および精巣病理組織像の検討)
【患者様へメッセージ】 「恥ずかしい」「相談しにくい」と感じがちな泌尿器のお悩みや男性更年期について、専門医が丁寧に診療します。お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。