お熱で無精子に?発熱後の精液検査は要注意!
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
高熱が「無精子症」を招くことがある —医学的根拠を交えた解説
―発熱による一過性の精子形成停止から回復まで―
1. 高熱が原因で“精子がほとんど/全く存在しない”状態になることがある
高熱(たとえば体温39℃以上)を経験した男性で、**一時的に射出精液中に精子が確認されない(無精子症)**状態に至る可能性があります。
たとえば、ある症例では発熱 41.2℃を10日間経験した後、精子が検出されず、発熱から約3か月後に回復したと報告されています。
2. メカニズム:なぜ発熱で精子が作られなくなるのか?
- 精巣(精子を作る器官)は、体温よりも2〜3℃低い環境で最も活発に機能することが分かっています(精巣外陰部設置+冷却機構など)。
- 高熱によって体温・精巣温度が上昇すると、精子を作る細胞(精祖細胞/精母細胞など)が熱ストレスを受け、精子形成過程が停止または著しく低下する可能性があります。
- その結果、精液検査で「精子数の著しい減少」や「無精子症」となることがあります。
このメカニズムは、発熱を伴う感染症後や高温環境曝露でも報告されています。
3. 回復には時間がかかる:目安として3か月程度
発熱が原因と考えられる一時的な無精子症の場合、多くのケースで3か月前後で精子が再び出現しています。
例えば、ウイルス性髄膜炎を契機とした症例では発熱後2か月で無精子、その後4〜5か月で精子数が回復して自然妊娠に至ったと報告されています。
この「3か月」という目安は、精子が作られ、成熟して射出されるまでにかかる時間(およそ70〜90日)とも整合的です。
4.チェックすべきポイント
- ブライダルチェックや不妊治療の精液検査で「無精子症」または「著明な乏精子症」と言われた場合、まず自分が直近(数週間〜数か月)に39℃前後の高熱を出していなかったかを確認してください。
- 高熱の経験がある場合、**無精子と診断された直後に過剰な治療を行う前に「3か月後に再検査」**を検討するというアプローチも医学的に支持されています。
- それでも精子が戻らない場合は、精液検査の再評価、ホルモン検査、精巣超音波検査、場合によっては精巣生検などが検討されます。
5. 参考文献/リンク
- Koentjoro-Soehadi L, “Azoospermia caused by typhoid fever. A case report.” Andrologia. 1982;14(1):31-2. doi:10.1111/j.1439-0272.1982.tb03092.x. (link: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/7199835/)
- Odom N, Kutteh W. “Transient Azoospermia Caused by a Febrile Episode Secondary to Meningitis.” J Gynecol Women’s Health. 2017;7(2):555707. DOI:10.19080/JGWH.2017.07.555707. (link: https://juniperpublishers.com/jgwh/pdf/JGWH.MS.ID.555707.pdf)
- Abdelhamid MHM et al. “An Assessment of Men Semen Alterations in SARS-CoV-2: Is Fever the Principal Concern?” Reprod Sci. 2023;30:72-80. DOI:10.1007/s43032-022-00889-z.
- Wosnitzer M. “Review of Azoospermia.” Spermatogenesis & Male Infertility. 2014. (link: https://www.tandfonline.com/doi/full/10.4161/spmg.28218)
6. まとめ
- 39℃前後の高熱を出すことで、一時的に精子が作られず、無精子状態に至る可能性があります。
- 原因は、精巣温度上昇による精子形成の停止/低下です。
- 多くは発熱から約3か月で回復しますが、回復しない場合もあるため、**「直近の発熱有無の確認」→「3か月後の再検査検討」**というステップが有効です。
- 無精子と診断されたら、原因を焦らず整理し、発熱の有無も含めて検討を。
