「キンタマがない?」赤ちゃんの停留精巣と遊走精巣の違い|太宰府の泌尿器科

監修

小林知広

日本専門医機構認定 泌尿器科専門医

赤ちゃんの陰嚢(玉袋)に精巣がない…それは「停留精巣」または「遊走精巣」かもしれません。放置すると将来の不妊や癌のリスクも。見分け方や手術の時期、遊走精巣との違いについて、太宰府の解説します。


この記事は、日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医の小林 知広 (天拝坂こばやしクリニック院長 プロフィールはこちらhttps://tenkoba.clinic/doctor/)が執筆・監修しています。


オムツ替えやお風呂のとき、ふと**「あれ?片方のタマタマ(精巣)がない気がする…」と気づいて、ドキッとしたことはありませんか? あるいは、「たまにあるけど、たまに消える」**という状態で、「これって病気なの?」と不安に思われているパパ・ママもいらっしゃるかもしれません。

男の子のデリケートな部分のことだけに、誰に相談していいか分からず悩みますよね。 今回は、小児によく見られる**「停留精巣(ていりゅうせいそう)」「遊走精巣(ゆうそうせいそう・移動性精巣)」**について、その違いや治療のタイミングを専門医が解説します。

1. そもそも「停留精巣」とは?

精巣(睾丸)は、赤ちゃんがお母さんのお腹にいるとき、実はお腹の中で作られます。その後、生まれる直前にかけて、足の付け根(鼠径管)を通って、本来の場所である「陰嚢(いんのう)」という袋の中に降りてきます。

停留精巣とは、この「降りてくる」過程が途中で止まってしまい、精巣が陰嚢の中に届いていない状態のことです。 生まれたばかりの男の子の約2ー5%に見られますが、生後数ヶ月で自然に降りてくることも多く、1歳頃には約1%程度になります。

なぜ治療が必要なの?

「痛くないならそのままでもいいのでは?」と思われるかもしれませんが、精巣は**「熱に弱い」**という特徴があります。 お腹の中や足の付け根は、袋(陰嚢)の中に比べて体温が2〜3度高いため、長く留まっていると精巣の発達が妨げられてしまいます。

その結果、将来的に以下のようなリスクが高まることが分かっています。

  • 男性不妊症:精子を作る機能が低下してしまう。
  • 精巣がん:将来、癌になるリスクが通常より高くなる。

上記のリスクがありますので1歳前後から2歳をめどに手術を検討します。

2. 「遊走精巣(移動性精巣)」とは?

一方で、よく似た状態に**「遊走精巣(移動性精巣)」**があります。 これは、精巣自体は降りてきているものの、精巣を引っ張り上げる筋肉(挙睾筋)の力が強いために、普段は高い位置(足の付け根あたり)に上がってしまっている状態です。

遊走精巣の場合は、基本的には治療(手術)の必要はなく、経過観察で良いことがほとんどです。

3. どっちか見分けるポイントは「お風呂」

「うちの子はどっちなんだろう?」と迷ったら、お風呂に入っているときにチェックしてみてください。

  • 遊走精巣:お風呂でリラックスして体が温まっている時に、精巣が袋の中に降りてきている
  • 停留精巣:お風呂などのリラックス時でも、常に袋の中が空っぽである。お風呂は温かいので陰嚢袋が弛緩してより陰嚢内にとどまる可能性が高いです。

もし、「お風呂でも降りてこない」という場合は、停留精巣の可能性があります。

4. 治療を始めるタイミングは?

日本小児外科学会や日本泌尿器科学会のガイドラインでは、**「2歳頃まで(早ければ1歳前後)」**の手術が推奨されています。

  • 生後6ヶ月頃まで:自然に降りてくるのを待ちます。
  • 1歳を過ぎても降りてこない場合:自然治癒は難しいため、手術(精巣固定術)を検討します。

昔は「小学校に入るまでに」と言われていたこともありましたが、現在は精巣の機能を守るために、より早期の治療がスタンダードになっています。

5. 悩んだらまずは泌尿器科へ

「検診で様子を見ましょうと言われたけれど心配」 「手術が必要なのかどうか知りたい」

そんな時は、一度専門医にご相談ください。 当院では、触診や超音波検査(エコー)を用いて、精巣がどこにあるか、大きさは正常かなどを痛みなく診断します。 もし手術が必要な場合は、小児の手術に対応した連携病院(こども病院や大学病院など)へスムーズにご紹介いたします。

小児の精巣に関するよくある質問

Q1. 自然に治ることはありますか?

生後6ヶ月頃までは、自然に陰嚢まで降りてくる可能性があります。しかし、1歳を過ぎても降りてこない場合は、それ以降に自然に治る可能性は低いとされています。

Q2. 将来、子供ができなくなりますか?

停留精巣を放置すると、精子を作る機能が低下し、不妊のリスクが高まります。しかし、適切な時期(2歳頃まで)に手術を受けることで、将来の妊孕性(妊娠させる力)を改善できることが分かっています。妊孕性の改善も100%ではありません。

Q3. 手術は難しいのですか?

「精巣固定術」という手術を行いますが、比較的安全性の高い手術ですが手術に伴う合併症はあります。一般的には全身麻酔で行われ、数日の入院が必要になることが多いです。手術については専門の医療機関に紹介させていただきます。


この記事の監修者 天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)

【保有資格】

  • 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
  • メンズヘルス学会認定 テストステロン治療認定医

【経歴】

  • 2009年 島根大学医学部 卒業 / 武田病院 初期研修
  • 2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
  • 2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
  • 2017年 京都ルネス病院泌尿器科・透析科 医長
  • 2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長

【受賞歴】

  • 2015年 第34回アンドロロジー学会学術大会 臨床部門学会賞 受賞 (論文題:非閉塞性無精子症患者980人におけるAZF遺伝子欠失の頻度とTESEでの精子採取率および精巣病理組織像の検討)

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