前立腺肥大症

この記事の要約

  • 尿の勢いが弱い・夜中に何度もトイレに起きる・残尿感がある、は前立腺肥大症のサインのことがあります
  • 前立腺の大きさだけで症状の強さは決まりません。膀胱の働き・尿の勢い・残尿量も合わせて評価します
  • 治療は生活習慣の見直しや飲み薬から検討し、必要な場合に手術を考えます。尿がまったく出ないときは早急に受診してください
小林知広

監修

小林知広

日本専門医機構認定 泌尿器科専門医

最終確認
2026/11/1

尿の勢いが弱い、出始めるまで時間がかかる、夜中に何度もトイレに起きる。こうした症状の原因の一つが、前立腺肥大症です。治療は手術だけではなく、生活習慣の見直しや飲み薬から検討できます。

ただし、同じ症状でも膀胱の働きやほかの病気が関係することがあります。症状のつらさと検査結果を合わせて、原因に合った治療を選ぶことが大切です。

尿がまったく出ず、下腹部が張る・痛む場合は、早急な処置が必要なことがあります。通常の予約日を待たず、速やかに医療機関を受診してください。診療時間外は救急外来へご相談ください。

前立腺肥大症の見出しと、説明する院長、てんこばくん、夜の窓とトイレのイラスト
尿の出にくさや夜間のトイレの悩みは、原因を確かめて治療を選びます。

こんな症状はありませんか?

前立腺肥大症では、尿を出すときだけでなく、ためるときや排尿した後にも症状が現れます。

  • 尿の勢いが弱く、出始めるまでに時間がかかる
  • 排尿の途中で尿が途切れる、おなかに力を入れないと出にくい
  • 日中のトイレの回数が増えた
  • 夜中に尿意で何度も目が覚める
  • 急に強い尿意を感じ、トイレまで我慢しにくい
  • 排尿後も尿が残っている感じがする
  • 排尿を終えてから、下着に少量の尿が漏れる

「年齢のせいだから」と我慢する必要はありません。外出や仕事、睡眠に支障がある場合は、泌尿器科でご相談ください。

前立腺肥大症とは

前立腺は、膀胱のすぐ下で尿道を取り囲み、精液の一部をつくる臓器です。加齢や男性ホルモンの働きなどが関係して大きくなり、尿の通り道を圧迫すると、尿が出にくくなることがあります。

尿が出にくくなる2つの仕組み

前立腺肥大症に伴う排尿障害には、主に次の2つの仕組みが関係します。

  1. 前立腺が大きくなることによる圧迫
    前立腺が大きくなると、その中を通る尿道が圧迫され、尿が通りにくくなることがあります。
  2. 交感神経の過剰な刺激による筋肉の緊張
    交感神経の刺激が強まると、α1受容体を介して前立腺や膀胱の出口の筋肉が締まり、尿が出にくくなることがあります。前立腺が急に大きくならなくても、筋肉の緊張によって症状が悪化する場合があります。

大きさによる圧迫と筋肉の緊張は、重なって起こることもあります。このため、前立腺の大きさだけで症状の強さは決まりません。膀胱が尿をためる・押し出す働きも含め、尿の勢いや排尿後に残る尿の量などを合わせて評価します。

通常の尿道と、前立腺の増大による圧迫、交感神経の刺激による筋肉の緊張を比較した模式図
前立腺の大きさによる圧迫と、筋肉の緊張が、尿の出にくさに関係します。

頻尿や夜間頻尿が、すべて前立腺のせいとは限りません

急に我慢しにくい尿意が起こる「過活動膀胱」が、前立腺肥大症に伴うことがあります。一方、夜間頻尿には、夜間につくられる尿の量が多いことや、睡眠の問題、糖尿病などが関係する場合もあります。

尿を出しやすくする薬だけでは改善しにくいときは、こうした原因も確認します。

過活動膀胱について

前立腺がんとは別の病気です

前立腺肥大症は良性の病気で、それ自体が前立腺がんに変わるわけではありません。ただし、両方の病気が同時に存在することはあります。

前立腺がんは早期には症状がないことも多く、排尿症状だけで区別することはできません。年齢やこれまでの検査結果などを踏まえ、必要に応じてPSA検査などを検討します。PSAは前立腺の異常を調べる血液検査ですが、数値だけでがんを確定したり、否定したりすることはできません。

PSA検査について

院長とてんこばくんのやさしい解説「トイレが近いのは、年のせい?」

4コマ漫画「前立腺肥大症、まずは原因の確認から」。1コマ目、てんこばくん「トイレが近いのは、年のせい?」。2コマ目、院長「前立腺だけでなく、膀胱などの原因も調べます」。3コマ目、てんこばくん「どんな検査をするの?」院長「尿検査やエコーなどで確認します」。4コマ目、院長「生活の工夫や薬など、状態に合わせて治療します」。尿がまったく出ないときは、早急に受診してください
トイレの悩みは、前立腺だけでなく膀胱などの原因も確認します。

早急な受診が必要な症状

尿意があるのに尿がまったく出ない、下腹部が強く張る・痛む場合は、「尿閉」と呼ばれる状態が疑われます。カテーテルで尿を出す処置などが必要になるため、通常の予約を待たずに受診してください。

また、発熱や悪寒を伴って尿が出にくい、血の塊が出て排尿しにくい、強い痛みがある場合も、速やかな受診が必要です。見た目で分かる血尿は、痛みがなくても前立腺肥大症と決めつけず、原因を調べる必要があります。

当院で行う検査

当院では、症状や診察の結果に応じて、尿検査、超音波検査、尿流測定、残尿測定、PSA検査などを組み合わせます。すべての方に一律に同じ検査を行うわけではありません。

直腸診について

直腸診は、肛門から指を入れて前立腺の状態を確認する診察です。当院では、前立腺肥大症が疑われる方に対して、基本的に直腸診は行っていません。問診や尿検査、超音波検査、尿流測定・残尿測定、必要に応じたPSA検査などを組み合わせて評価します。

ただし、症状や検査結果などから直腸診が必要と判断した場合は、その目的をご説明したうえで検討します。

問診・症状の確認

いつから症状があるか、どの症状が一番困るか、睡眠や日常生活にどの程度影響しているかを確認します。症状を点数で整理する質問票も、困りごとの把握に役立ちます。

持病や服用中の薬も、尿の出方に関係します。お薬手帳や健診結果があればお持ちください。夜間頻尿が主な症状の場合は、排尿した時刻や尿量を記録する「排尿日誌」が、原因を考える手がかりになります。

尿検査

尿に血液や炎症の所見などがないかを調べます。感染症やほかの病気による症状ではないかを確認するための検査です。

超音波検査・残尿測定

超音波で前立腺の大きさや膀胱の状態を確認し、排尿後には膀胱内に残っている尿の量を調べます。「尿が残っている感じ」と、実際に残る尿の量は一致しないこともあります。

尿流測定

専用の機器に排尿し、尿の勢いや出方を調べます。尿の量によって結果が変わるため、必要に応じて再検査を行います。

PSA検査・必要に応じた追加検査

PSA検査は、前立腺がんの可能性などを評価する手がかりになります。前立腺肥大症や炎症などでも高くなるため、結果はほかの所見と合わせて判断します。状態によっては腎機能の血液検査や、さらに詳しい検査を検討します。

前立腺肥大症の治療

治療の目標は、尿の出にくさやトイレの悩みを軽くし、生活への支障を減らすことです。尿閉などの合併症の有無、前立腺の大きさ、残尿量、ご本人の希望も踏まえて治療を選びます。

生活習慣の見直し・経過観察

症状が軽く、合併症がない場合は、生活習慣を見直しながら経過を見ることがあります。

  • 就寝前の水分のとりすぎを避ける
  • アルコールやカフェインをとりすぎない
  • 排尿を長時間我慢しない
  • 便秘を整える
  • 市販のかぜ薬などを使う前に、医師や薬剤師へ相談する

トイレが心配でも、水分を極端に控えるのは避けてください。心臓や腎臓の病気などで水分量の指示がある方は、その指示に従って調整します。

尿を出しやすくする薬

α1遮断薬は、交感神経の刺激がα1受容体に伝わるのを抑え、前立腺や膀胱の出口の筋肉の緊張を和らげて、尿を出しやすくする薬です。前立腺そのものを小さくする作用とは異なります。

めまい、立ちくらみ、射精の変化などが起こることがあり、薬の種類によって特徴が異なります。白内障の手術を受ける予定がある方は、この種類の薬を使用していることを眼科の医師にも伝えてください。

PDE5阻害薬のタダラフィルも、前立腺肥大症に伴う排尿障害の治療に用います。頭痛、ほてり、消化不良などが起こることがあります。硝酸剤・一酸化窒素(NO)供与剤やリオシグアトとは併用できません。特定の心血管疾患や重度の腎・肝機能障害など、使用できない条件があるため、持病や併用薬を確認して判断します。

前立腺を小さくする薬

前立腺が大きい場合は、5α還元酵素阻害薬のデュタステリドを検討します。前立腺を小さくする作用があり、効果の評価には通常6か月ほど必要です。

性欲の低下、勃起や射精の変化、乳房の張り・痛み、肝機能障害などの副作用があります。また、服用中はPSA値が低くなるため、健診などでPSA検査を受ける際も、服用していることを必ず伝えてください。

強い尿意や頻尿が残る場合

過活動膀胱を伴う場合は、膀胱の働きを整える薬を組み合わせることがあります。ただし、尿が出にくい方では残尿の増加や尿閉に注意が必要です。尿の出方や残尿量を確認しながら調整します。

手術を検討する場合

薬で十分に改善しない場合に加え、尿閉を繰り返す、尿が出にくいことによる腎機能への影響がある、膀胱結石や感染を繰り返す場合などは、手術を検討します。

尿道から内視鏡を入れて前立腺の組織を取り除く方法などがあり、前立腺の大きさや全身の状態、治療後の射精への影響なども考えて方法を選びます。出血、感染、排尿状態や射精の変化などのリスクがあるため、効果と負担について説明を受けたうえで判断します。手術が必要な場合は、手術に対応する医療機関での治療を検討します。

前立腺肥大症の症状、尿検査や超音波検査、生活習慣・薬・手術による治療の考え方をまとめた縦型イラスト。1 気になる症状(尿の勢いが弱い、夜中のトイレ、残尿感)、2 原因を確かめる検査(尿検査・超音波検査、尿の勢い・残尿の測定)、3 状態に合わせた治療(生活習慣の見直し、薬による治療、必要に応じて手術を検討)。尿がまったく出ない・下腹部が強く張るときは早急に受診
症状と検査結果を合わせて、生活習慣の見直しや薬などから治療を検討します。

よくある質問

Q. 何歳くらいから起こる病気ですか?
A. 加齢とともに増える病気ですが、年齢だけで診断することはできません。若い方の尿の出にくさでは、別の原因が関係する場合もあるため、症状が続くときはご相談ください。
Q. 薬はずっと飲み続ける必要がありますか?
A. 症状や検査結果、薬の種類によって異なります。続けることで症状を抑える薬もあり、中止すると症状が戻ることがあります。改善しても自己判断で中止せず、減量や中止が可能かを診察で相談してください。
Q. 残尿感があると、必ず尿が残っているのですか?
A. 必ずしもそうではありません。残尿感が強くても実際の残尿は少ないことがあり、反対に、あまり気にならなくても多く残っている場合があります。超音波などで確かめます。
Q. 市販薬やサプリメントで様子を見てもよいですか?
A. 症状が続く場合は、まず原因を確認することをおすすめします。尿の出にくさや頻尿は、前立腺肥大症以外でも起こります。市販薬やサプリメントだけで、尿閉や前立腺がんなどの有無を判断することはできません。
Q. 検査で痛いことをしますか?
A. 尿検査や尿流測定は採尿・排尿による検査です。おなかに機器を当てる超音波検査や残尿測定も、通常は強い痛みを伴いません。採血や追加の診察・検査が必要な場合は、その内容をご説明します。

排尿の悩みを、生活への支障に合わせてご相談ください

天拝坂こばやしクリニックは、福岡県太宰府市大佐野の泌尿器科です。尿の出方だけでなく、夜の睡眠や外出への影響も含めて症状を確認し、検査結果に応じた治療を検討します。

診察では、「夜中に何回起きるか」「尿が出るまでどのくらい待つか」など、困っている場面をそのままお伝えください。

ご予約・お問い合わせ

排尿の悩みは、生活への支障に合わせてご相談ください。