【院長解説】ED治療薬が使えない方へ|陰圧式勃起補助具「ビガー2020」という選択肢
監修
小林知広
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
ニトログリセリンなど心臓の薬を飲んでいてED薬が使えない方、ED内服薬が効かない方へ。日本唯一の承認陰圧式勃起補助具「ビガー2020」を太宰府市の泌尿器科専門医が効果・費用・デメリットなどを解説します。


この記事の要約
- 心臓病の薬(硝酸薬、ニトログリセリン)を服用中でED治療薬が使えない方でも、ビガー2020は使用可能です
- 日本で現在ED治療用として購入できる唯一の厚労省承認管理医療機器で、国内外のガイドラインに記載されています
- 「準備の手間」「初期費用」というデメリットはありますが、全身性副作用がほぼなく安全性が高い治療法です
執筆・慣習
小林 知広(こばやし ともひろ)
天拝坂こばやしクリニック 院長
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
はじめに――「ED薬が使えない」「効かない」、その先に何があるか
「狭心症の薬を飲んでいるので、ED薬は使えないと言われた」
「タダラフィルもバルデナフィルも試したけど、思ったような効果が出なかった」
外来でこういったお話を聞くことは、決して珍しくありません。
ED治療の第一選択はPDE5阻害薬(内服薬)ですが、硝酸薬(ニトログリセリン・硝酸イソソルビドなど)との併用は重篤な血圧低下を引き起こす危険があるため、絶対禁忌です。心疾患をお持ちの方や、重度の糖尿病・神経障害がある方では、内服薬の選択肢が最初から閉ざされているケースがあります。
そういった方に知っていただきたいのが、今回ご紹介する陰圧式勃起補助具「ビガー2020」です。
ビガー2020とは――日本唯一の承認VED
ビガー2020は、厚生労働省が承認した管理医療機器(クラスII・承認番号:30300BZX00279000)です。現在、日本でED治療用として購入できる唯一の陰圧式勃起補助具(VED)であり、市販の未承認グッズとは医学的な位置づけがまったく異なります。
男性性機能障害診療ガイドライン(2025年版)にも記載されており、PDE5阻害薬が無効・禁忌の症例、前立腺がん術後・直腸がん術後のEDにも使用されています。
仕組み
- 陰茎を透明なシリンダーに挿入する
- 手動ポンプで筒内を陰圧(真空状態)にする
- 陰圧により血液が海綿体へ流入し、勃起が形成される
- 専用のシリコンリングを陰茎の根部に装着し、血液の流出を抑えて勃起を維持する
内服薬のように「神経→血管拡張」という経路を使いません。物理的に血液を送り込むため、神経機能や血管機能がどれだけ低下していても使用できるのが最大の特徴です。構造がシンプルで故障しにくく、年齢を問わず操作が比較的容易な点も特徴の一つです。
なぜ「薬が使えない方」に有効なのか
8. ED治療薬との比較
【結論】ED治療薬は薬理作用で血管を拡張させる治療、ビガー2020は物理的に血液を引き込む治療です。それぞれ得意な領域・適応となる方が異なります。
ED治療には、ビガー2020やED治療薬のほかに、血管そのものの改善を目指す「ED衝撃波治療(LI-ESWT)」という選択肢もあります。詳しくはED衝撃波治療「RENOVA(レノーヴァ)」の解説記事をご覧ください。
両者の比較表
| 項目 | ED治療薬(PDE5阻害薬) | ビガー2020 |
|---|---|---|
| 仕組み | 血管拡張作用(薬理) | 陰圧による血流誘導(物理) |
| 即効性 | 服用後30分〜数時間 | 操作後すぐ |
| 全身性副作用 | 頭痛・顔のほてり等あり | 全身性副作用なし |
| 心血管系の制限 | 硝酸薬服用は禁忌 | 制限なし |
| 前立腺手術後 | 神経損傷例は効果低下 | 神経状態に依存しない |
| 継続コスト | 1錠あたりの費用が発生 | 初回購入後の追加費用は少ない |
| 使用感 | 自然な勃起に近い | 操作・装着が必要 |
| 性的興奮の必要性 | 必要 | 必要なし |
どちらが優れているかではなく、患者さま一人ひとりの状況(基礎疾患・併用薬・ライフスタイル・経済状況)に応じて適切な選択肢が異なります。当院では泌尿器科診療の枠内で、診察時にこれらを丁寧にヒアリングし、最適と思われる治療法をご提案いたします。
ケース① 硝酸薬(ニトログリセリン等)を服用中の方
狭心症・心不全などで硝酸薬を使用している場合、PDE5阻害薬との併用は禁忌です。しかしビガー2020は薬剤ではないため、硝酸薬との禁忌関係がありません。心臓の薬を飲みながらでも使用できます。また内服薬・注射薬との併用も基本的に可能です。
⚠️ 重篤な心疾患がある場合、性行為自体のリスク評価が必要です。必ず医師にご相談ください。
ケース② PDE5阻害薬が効かない・効きにくい方
重度の糖尿病、動脈硬化の進行、前立腺全摘術後の神経損傷など、血管・神経のダメージが進んでいる場合は内服薬の効果が限定的になります。ビガー2020は神経・血管機能に依存しないため、薬物療法が無効だった方でも効果が期待できます。
欧州泌尿器科学会(EAU)ガイドラインでも、PDE5阻害薬が無効・禁忌のすべてのEDタイプに対する治療選択肢としてVEDが位置づけられています。
多施設共同研究(順天堂大学グループ)では、ビガー2020使用によりED改善率93.3%、うち62.5%が性交可能レベル(EHS≧3)に達したことが報告されています。これはすべての方に同等の結果が得られることを保証するものではありません。
ビガー2020のメリットとデメリット
✅ メリット
1. 薬剤禁忌・薬物無効でも使える
神経・血管機能に依存しない物理的な作用のため、内服薬が使えない・効かないケースでも対応できます。これが最も重要な利点です。
2. 効果の再現性が高い
操作するたびに一定の勃起が得られるため、「今日は効いたり効かなかったり」という不安定さがありません。
3. 陰茎リハビリテーション効果(Penile Rehabilitation)
EDが続くと夜間勃起が減少し、海綿体が低酸素状態になって線維化が進みます。ビガー2020を定期的に使用することで海綿体への酸素供給・血流改善が期待でき、機能低下の進行を抑制します。性交目的に限らず、毎日10分程度の陰圧トレーニング(通称「Pトレ」)として使用することで、海綿体機能の維持・改善を図ることができます。
4. 全身性副作用がほぼない
内服薬のような頭痛・顔面紅潮・血圧変動といった全身性の副作用がありません。
5. 一度購入すれば繰り返し使用できる
毎回薬を購入する必要がなく、長期的にはコストが抑えられます。構造がシンプルで故障しにくいのも利点です。
❌ デメリット
1. 初期費用が高い
当院での費用は98,000円(税込・自由診療)です。内服薬と比べると初期投資は大きくなります。
2. 使用までの準備に手間がかかる
内服薬は飲むだけですが、ビガー2020はシリンダーのセット・ポンプ操作・リング装着という手順が必要です。自然な流れの中でこの準備をどう組み込むかが、継続使用のカギになります。慣れると5〜10分程度で準備できるようになります。
3. リング装着中の制限がある
シリコンリングは30分以内に必ず外してください。長時間の装着は血流障害を起こす危険があります。
4. 一時的な副作用が生じることがある
点状出血・軽度の疼痛・内出血・冷感などが起こることがあります。いずれも一般的には軽微で可逆的です。
使用をお勧めしにくい方・注意が必要な方
以下に該当する方は、使用前に必ず医師にご相談ください。
- 鎌状赤血球症のある方
- 重度の出血傾向がある方・抗凝固療法中の方
- 重篤な心疾患がある方(性行為自体のリスク評価が必要)
- 陰茎に過去に外傷・手術歴がある方
2つの使い方――「性交補助」と「Pトレ(リハビリ)」
使い方① 性交補助(必要なときに使う)
性行為前にポンプ操作で勃起を形成し、リングで維持して使用します。必要なタイミングで使えるため、内服薬のように「何時間前に飲む」という縛りがありません。
使い方② Pトレ(陰茎リハビリテーション)
性交目的ではなく、毎日10分程度の陰圧トレーニングとして使用します。海綿体への血流・酸素供給を継続的に行うことで、機能低下の進行抑制・改善を目指します。特に前立腺がん術後など、長期的なリハビリが必要な方に有効です。
こんな方に特に向いています
- ニトログリセリンなど硝酸薬を服用中でED薬が使えない方
- 内服薬を試したが効果が不十分だった方
- 前立腺がん手術後・直腸がん手術後でEDが生じている方
- 糖尿病・神経障害によるEDで薬の効果が出にくい方
- 毎回の薬代をかけずに繰り返し使用したい方
- 陰茎リハビリテーション(Pトレ)に継続的に取り組みたい方
当院での対応について
ビガー2020は医師の指導のもとで正しく使用することが重要です。当院では以下をご案内しています。
- 適応の確認(禁忌事項・基礎疾患・服用薬の確認)
- 使用方法の説明(操作手順・リング装着時間の厳守)
- Pトレ(リハビリ目的)での使用プロトコール
- 内服薬・RENOVA衝撃波との併用可否の判断
集学的ED治療の詳細はこちら:https://tenkoba.clinic/column/937/
よくあるご質問(Q&A)
Q1. 心臓の薬を飲んでいますが、本当に使えますか?
ビガー2020は薬剤ではないため、硝酸薬との禁忌関係はありません。ただし重篤な心疾患がある方は性行為自体のリスク評価が必要ですので、必ず診察時にお申し出ください。
Q2. 準備の手間はどれくらいですか?
慣れるまでは10〜15分程度かかることがありますが、慣れると5〜10分程度になります。内服薬より手間はかかりますが、「確実に勃起が得られる」再現性の高さを評価される方も多いです。
Q3. 毎日Pトレとして使っても大丈夫ですか?
リハビリ目的での定期使用は有効とされています。頻度・使用時間については医師の指導に従ってください。
Q4. 内服薬や衝撃波治療と一緒に使えますか?
症例によっては併用可能です。診察時にご相談ください。
Q5. 前立腺がん手術後でも使えますか?
はい。神経機能に依存しないため、前立腺癌手術後でも勃起効果が期待できます。
術後EDのリハビリとしても有効です。術式・術後経過を診察時にお伝えください。
Q6. 太宰府市・筑紫野市から受診できますか?
はい。筑紫野市・大野城市・春日市・小郡市からもお車でご来院いただけます。駐車場完備です。
Q7. 費用はすべて自費ですか?
はい。健康保険適用外(自由診療)で、当院での費用は98,000円(税込)です。全額自己負担となります。
ED治療の他の選択肢については、以下の記事もご覧ください:
・[ED衝撃波治療「RENOVA(レノーヴァ)」とは](https://tenkoba.clinic/column/1179/)
・[男性更年期障害(LOH症候群)の診療について](https://tenkoba.clinic/column/1216/)
・[EDに関するコラム一覧](https://tenkoba.clinic/column-cat/ed/)
まとめ
「ED薬が使えない」「薬を試したが効かなかった」という状況は、決して治療の終わりではありません。
ビガー2020は日本唯一の承認VEDとして、内服薬とまったく異なるアプローチでEDに対応します。準備の手間・初期費用というデメリットはあります。しかし「確実性」「安全性」「リハビリ効果」という点で、薬物療法が難しい方にとって現実的かつ有力な選択肢です。
まずは一度、専門医にご相談ください。
▶ Web予約はこちら(24時間受付)
https://patient.digikar-smart.jp/institutions/a356aa2e-6198-4d7f-9416-0731c1996e97/reserve
監修者情報(完全版)
小林 知広(こばやし ともひろ)
天拝坂こばやしクリニック 院長
【保有資格】
日本専門医機構認定 泌尿器科専門医
日本メンズヘルス医学会認定 テストステロン治療認定医
【経歴】
2009年 島根大学医学部 卒業 / 武田病院 初期研修
2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
2017年 京都ルネス病院 泌尿器科・透析科 医長
2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長
【受賞歴】
2015年 第34回アンドロロジー学会学術大会 臨床部門学会賞 受賞
(論文題:非閉塞性無精子症患者980人におけるAZF遺伝子欠失の頻度とTESEでの精子採取率および精巣病理組織像の検討)
【患者様へメッセージ】
「恥ずかしい」「相談しにくい」と感じがちな泌尿器のお悩みやEDについて、専門医が医学的根拠に基づいて丁寧に診療します。お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。
参考文献
1. 日本性機能学会・日本泌尿器科学会
『男性性機能障害診療ガイドライン(2025年版)』
メディカルレビュー社、2025年9月19日発行
学会公式:https://www.jssm.info/guideline/
(旧版第3版 Minds掲載:https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0131/G0001077)
2. Burnett AL, Nehra A, Breau RH, et al.
Erectile Dysfunction: AUA Guideline.
J Urol. 2018;200(3):633-641. PubMed PMID: 29746858
DOI:https://doi.org/10.1016/j.juro.2018.05.004
AUA公式:https://www.auanet.org/guidelines/guidelines/erectile-dysfunction-(ed)-guideline
※公開前にURL動作確認をお願いします。
3. European Association of Urology
EAU Guidelines on Sexual and Reproductive Health(最新版)
https://uroweb.org/guidelines/sexual-and-reproductive-health
4. Wang R, Martins FE, Ralph D, et al.
Vacuum erectile devices for erectile dysfunction: recommendations from the 5th international consultation on sexual medicine.
Sex Med Rev. 2025;13(2):172-183. PubMed PMID: 39957431
DOI:https://doi.org/10.1093/sxmrev/qeaf002
PubMed直リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39957431/