「痛くない」から怖い梅毒の初期症状。1回の注射で治療を目指す注射治療「ステルイズ」

小林知広

監修

小林知広

日本専門医機構認定 泌尿器科専門医

「手のひらに赤い発疹が…」「性器にしこりが…」それ、急増中の梅毒かもしれません。痛みがないまま進行する恐怖の性病。飲み薬だけでなく、世界標準の「注射治療(ステルイズ)」が可能になった日本の最新事情を泌尿器科専門医が解説します。


この記事は、日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医の小林 知広 (天拝坂こばやしクリニック院長 プロフィールはこちらhttps://tenkoba.clinic/doctor/)が執筆・監修しています。

皆さん、こんにちは。 天拝坂こばやしクリニック、院長の小林です。

今、日本で「梅毒(ばいどく)」という性感染症が爆発的に増えていることをご存知でしょうか? 2012年頃までは年間1,000人未満でしたが、近年はその10倍以上のペースで激増しています。

特に問題なのが、10代・20代の若い女性の感染が増えていることです。 「性風俗の話でしょ?」「私には関係ない」と思っていませんか? 梅毒は、性経験がある人なら誰でも感染する可能性がある、今もっとも身近で、かつ恐ろしい病気の一つです。

今回は、梅毒の症状の経過と、日本でもようやく可能になった「注射による治療」について解説します。

梅毒はどうやって感染する?

原因は「梅毒トレポネーマ」という病原体です。 感染経路は、粘膜や皮膚の接触です。

  • 通常の性行為(膣・ペニス)
  • アナルセックス
  • オーラルセックス(フェラチオ・クンニ)

「コンドームをつけていたから大丈夫」と油断はできません。口や肛門の接触でも感染しますし、コンドームで覆われていない部分の皮膚から感染することもあります。 もちろん、男性同士、女性同士でも感染します。

「痛くない」のが罠!梅毒の進行ステージ

梅毒の最大の特徴は、**「症状が出たり消えたりする」**ことです。 放置して症状が消えても、病原体は体内で増殖を続けています。

第1期(感染から3週間〜3ヶ月)

感染した場所(性器、口、肛門など)に、小豆大の「しこり」や「潰瘍(えぐれた傷)」ができます。

  • 特徴: 痛みを伴わないことが多いです。
  • 注意: 放置すると数週間で消えてしまいますが、治ったわけではありません!

第2期(感染から3ヶ月〜3年)

病原体が全身に回ります。

  • バラ疹: 手のひら、足の裏、背中などに赤い発疹が出ます。
  • 扁平コンジローマ: 肛門や性器にいぼのようなものができます。 この時期も、放置すると症状はいったん消えます。これが梅毒の恐ろしいところです。

第3期〜第4期(晩期顕性梅毒)

数年から数十年後、皮膚、骨、筋肉、内臓に**「ゴム腫」という腫瘍ができます。 さらに進行すると「神経梅毒」**となり、脳や脊髄が冒され、麻痺や認知症のような症状が出たり、心臓血管に異常が出たりして、死に至ることもあります。 ※漫画『JIN-仁-』で、鼻が落ちてしまう描写がありましたが、あれが晩期の梅毒の症状です。

妊婦さんの感染は赤ちゃんに危険が及びます

妊娠中の女性が梅毒に感染すると、胎盤を通じて赤ちゃんに感染し、**「先天性梅毒」**を引き起こします。 流産や死産の原因になるほか、生まれた赤ちゃんに以下のような障害が残る可能性があります。

  • 骨や軟骨の異常
  • 水頭症、知的障害
  • 目や耳の障害

もしパートナーが妊娠中に梅毒に感染してしまった場合、絶対に隠さず打ち明けてください。 ここで保身に走り、治療を遅らせることは、これから生まれてくる命を危険に晒すことになります。父親としての責任を持ちましょう。

最新の治療法:内服薬と「一発完治」の注射

梅毒は、早期に発見して治療すれば完治する病気です。

1. 飲み薬(アモキシシリンなど)

従来、日本での治療は内服薬が主流でした。 しかし、1日複数回、4週間〜12週間ほど飲み続ける必要があり、「飲み忘れ」や「途中でやめてしまう」ことが課題でした。

2. 注射薬「ステルイズ」

最近、日本でもようやく**「ベンジルペニシリンベンザチン(商品名:ステルイズ)」**という筋肉注射が承認されました。 これは海外では標準的な治療法で、早期梅毒であれば、お尻に1回注射するだけで治療が完了します(※病期によっては週1回×3回)。

当院でも、患者様の状態に合わせて、飲み薬と注射治療を選択可能です。

まとめ:少しでも不安なら検査を

梅毒は「昔の病気」ではありません。今まさに流行している現代病です。

  • 性器にしこりがある(痛くなくても!)
  • 手のひらに赤い発疹が出た
  • パートナーが変わった

このような心当たりがある方は、すぐに泌尿器科を受診してください。 症状がなくても心配な方は、全国の保健所で匿名・無料で検査を受けることもできます。

正しい知識(Safer Sex)を持ち、自分と大切なパートナーを守りましょう。

【おすすめの参考作品】 妊娠・出産・性感染症のリアルを学ぶには、以下の作品が非常に勉強になります。

  • 漫画『コウノドリ』(梅毒や先天性感染の話も出てきます)
  • 漫画・ドラマ『JIN-仁-』(ペニシリンのない時代の梅毒の恐ろしさが描かれています)

【参考文献・関連リンク】 梅毒の詳しい症状や最新の動向、検査については、以下の公的機関のサイトもご参照ください。


【当院の関連コラム】 梅毒についてこちらも参考にしてください👉 当院の関連コラムを読む


この記事の監修者 天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)

【保有資格】
日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
メンズヘルス学会認定 テストステロン治療認定医
【経歴】
2009年 島根大学医学部 卒業 / 武田病院 初期研修
2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
2017年 京都ルネス病院泌尿器科・透析科 医長
2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長
【受賞歴】 2015年 第34回アンドロロジー学会学術大会 臨床部門学会賞 受賞 (論文題:非閉塞性無精子症患者980人におけるAZF遺伝子欠失の頻度とTESEでの精子採取率および精巣病理組織像の検討)

【患者様へメッセージ】 「恥ずかしい」「相談しにくい」と感じがちな泌尿器のお悩みや男性更年期について、専門医が丁寧に診療します。お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

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