精液に血が混じったら?『血精液症』の原因と放置してはいけない危険なサイン

小林知広

監修

小林知広

日本専門医機構認定 泌尿器科専門医

「射精したら赤い玉が出た…もう終わり?」その都市伝説、医学的には「血精液症」です。前立腺炎や射精のしすぎなど、意外な原因と正しい対処法、なぜ「赤玉=男の終わり」と言われるのかを泌尿器科医が解説します。



この記事は、日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医の小林 知広 (天拝坂こばやしクリニック院長 プロフィールはこちらhttps://tenkoba.clinic/doctor/)が執筆・監修しています。

皆さん、こんにちは。 天拝坂こばやしクリニック、院長の小林(Dr.Koba)です。

男性の皆さん、**「赤玉(あかだま)」**という言葉を聞いたことはありますか? 「射精したときに赤い玉のようなものが出ると、一生性交渉ができなくなる(男の終わり)」 そんな、ちょっとホラーな都市伝説として、まことしやかに語り継がれています。

人気漫画『クピドの悪戯』でもこの赤玉が重要なモチーフとして描かれているので、ご存知の方もいるかもしれませんね。(とても面白い作品なので、興味がある方はぜひ!)

今回は、この恐ろしい「赤玉」の正体と、実際に起こる医学的な症状について、泌尿器科専門医が真面目に解説します。

都市伝説「赤玉」は本当に存在するのか?

結論から言います。 「赤玉」という固形物は存在しません。

しかし、射精した精液が赤く見える現象は実際に存在します。これを医学用語で**「血精液症(けっせいえきしょう)」**と呼びます。

精液は本来乳白色ですが、前立腺や精嚢(せいのう)などから少量の出血があると、精液に血液が混じり、赤やピンク、時には茶色っぽく見えることがあります。 これは泌尿器科の外来では、決して珍しくない症状です。

なぜ血が混じる?血精液症の主な原因

「血が出た!悪い病気かも!?」とパニックになる前に、主な原因を知っておきましょう。

  • 前立腺炎(急性・慢性):最も多い原因の一つです。
  • 精嚢(せいのう)出血:精液を溜めておく袋からの出血です。
  • 前立腺生検の後:検査の影響で一時的に混じることがあります。
  • 前立腺結石:前立腺の中に石ができることによる刺激。
  • 射精のしすぎ:過度な負担によるもの。
  • 原因不明:実は検査をしても異常が見つからないケースが30〜70%を占めます。

※性病(クラミジア・淋菌)や前立腺がんが原因のこともありますが、性病で血が出るほど悪化していれば激痛を伴いますし、がんは全体から見れば稀なケースです。 ※尿管結石は「血尿」の原因にはなりますが、精液の通り道とは違うため、基本的には関係ありません。

射精のしすぎや自転車も原因になる?

① 射精のしすぎ

これは医学的に**「起こり得ます」**。 前立腺は血流が非常に豊富な臓器で、射精時にはギュッと強く収縮します。短時間に連続して射精すると負荷がかかり、炎症や小さな出血が起こる可能性があります。

【Dr.Kobaの体験談】 実はお恥ずかしながら、私自身も研究のために「5回連続で精液検査」をした際、前立腺炎のような症状になり内服治療をした経験があります…。何事も「やりすぎ」には注意が必要です。

② ロードバイク(自転車)

硬いサドルで会陰部(股間)を長時間圧迫し続けると、前立腺への負担になることが報告されています。 プロレベルの長時間ライドでは「前立腺炎のような症状」「血精液症」「EDの悪化」のリスクがあるとされていますが、趣味で乗る程度の一般の方がそこまで神経質になる必要はありません。

なぜ「赤玉=男の終わり」と言われるようになったのか?

医学的には「多くが治る病気」であるにも関わらず、なぜこれほど怖い迷信が生まれたのでしょうか? これには、医学と文化が絡み合った3つの背景が考えられます。

理由1:発症年齢と「ED」の時期が重なる

血精液症は40〜60代に多く見られます。この年代は、ちょうどED(勃起不全)の悩みが出始める時期でもあります。 「精液が赤い」+「最近勃ちが悪い」=「もう男として終わりだ…」という連想が広まりやすかったと考えられます。

理由2:昔の「前立腺がん」の発見状況

PSA検査(血液検査)が普及していなかった時代、前立腺がんはかなり進行してから見つかることが多く、そのサインとして出血を伴うこともありました。 そのため、「赤い精液=治らない重病=終わり」というイメージが定着した可能性があります。

理由3:パチンコの「打ち止め」文化

昔のパチンコでは、台が打ち止め(終了)になる合図として「赤い玉」が出ていました。 この「終了」のサインと、性的な衰えが結びついて「赤玉」という言葉が生まれたという説も有力です。

まとめ:赤い精液が出たらどうすればいい?

  • 「赤玉」という固形物は出ませんが、**「血精液症」**は実際にあります。
  • 主な原因は前立腺炎や射精のしすぎなどで、多くは良性の疾患です。
  • がんは稀ですが、40歳以上の方は念のため検査をおすすめします。
  • パニックにならず、泌尿器科を受診すれば治療が可能です。

「赤玉が出たから一生できない」なんてことはありません。 もし症状が出ても、現在はED治療の選択肢も豊富にありますので、十分な改善が期待できます。 一人で悩まず、天拝坂こばやしクリニックへご相談ください。

【参考・関連リンク】 血精液症や前立腺の病気について、詳しくは以下のサイトもご参照ください。

【医学的根拠・参考文献】 本記事の作成にあたり、以下の文献を参照しています。

  1. Kumar P, Kapoor S, Nargund V. Haematospermia – a systematic review. Ann R Coll Surg Engl. 2006 Jul; 88(4): 339–342. PubMed
  2. Fuse H. Hematospermia: etiology, diagnosis, and treatment. Reprod Med Biol. 2011;10(3):153-158. PMC
  3. Madhushankha M, Jayarajah U, Abeygunasekera AM. Hematospermia: A Current Review. Sexual Health Issues. 2018.

この記事の監修者

天拝坂こばやしクリニック 院長 小林 知広(こばやし ともひろ)

【保有資格】

  • 日本泌尿器科学会認定 泌尿器科専門医
  • メンズヘルス学会認定 テストステロン治療認定医

【経歴】

  • 2009年 島根大学医学部 卒業 / 武田病院 初期研修
  • 2011年 JR大阪鉄道病院 泌尿器科
  • 2015年 獨協医科大学越谷病院泌尿器科 助教
  • 2017年 京都ルネス病院泌尿器科・透析科 医長
  • 2024年 天拝坂こばやしクリニック 院長

【受賞歴】

  • 2015年 第34回アンドロロジー学会学術大会 臨床部門学会賞 受賞 (論文題:非閉塞性無精子症患者980人におけるAZF遺伝子欠失の頻度とTESEでの精子採取率および精巣病理組織像の検討)

【患者様へメッセージ】 「恥ずかしい」「相談しにくい」と感じがちな泌尿器のお悩みや男性更年期について、専門医が丁寧に診療します。お一人で抱え込まず、まずはお気軽にご相談ください。

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